星の交尾


 俺はゴツゴツしたデコボコのクレーターに,一瞬だけムラっとした。
 本当にほんの一瞬。
 その天体は,綺麗な曲線美を画き陽に照らされ欠けていた。綺麗だと素直に思う。しかし,クレーターを,天体の自分が天体で一纏めにするのも可笑しな話だ。
 見ればみるほどムラムラは増していき,気がつけば俺は勃起していた。それを我慢することなく無造作にしごいてた。
 過去最短更新記録。

 それからというもの,毎晩欠かさず三日月を見ながらオナニーしていた。欲は消えるどころか日に日に増していった。
 そのうち,三日月とヤりたいと思い始める自分がいた。
 三日月とヤったら気持ちいいのだろうか。一度三日月を滅茶苦茶にしてみたい。
 よし,三日月を説得しよう。
 思い立ったが吉日。説得しに行くと決めたら,そこからは早かった。あの日の如く早かった。いや,速かった。
 俺は流れ星になって三日月に会いに行く。人間だって月に行ったんだ。人間より月に近い俺が会えない筈がない。
 三日月の所へ行くと,三日月は俺に一瞥をくれた。それが嬉しくて,年甲斐もなく舞い上がった。
 早速三日月におまんこさせてはくれないかと言ってみると,今度は隠す気など更々無いといった様子で侮蔑な表情をくれた。
 一度だけでいいんだと必死に頼む姿はさぞかし滑稽だろう。そう分かっていがらも,止めない俺は馬鹿なんじゃないかと思う。
 どんなに頼もうとも三日月は「ノー」の一点張りだった。一切合切俺の願いを聞いてくれる気はないようだ。
 そんな三日月の態度にイラッときた。最初はムラムラしたかと思ったら,次はイライラだ。
 ここまでくればヤるだヤらないだなんて事より意地だ,意地。感情に身を任せ,強姦することにした。
 憤る俺を前に三日月は顔色一つ変えなかった。まるでお前は矮小な奴だといわんばかりの態度が更に俺をイラつかせる。確かに俺は矮小だ。矮小惑星だよ。イライラ。イライラ。
 ここからは覚えていない。

 三日月を無理矢理に犯そうとそれしか頭になく,気持ち良かったかなんて覚えていない。
 そういえば,コンドームし忘れてた。もうこれ以上考えるのは面倒で,目を瞑り現実から逃避する。
 三日月の鼻を啜る音がする。最中に泣いていたのだろうか。本当にそれすら覚えていない。唯一覚えていることといえば,左乳首に一本ひょろ長い乳毛が生えていたことだ。思わずその乳毛を引っこ抜いたことまでは覚えている。
 あの乳毛のことを考えていると,何故だかムラッときた。
 恐るべし俺の性欲。もう一発ヤろうなんて発想が浮かんだ。
 よし,犯そう。
 目を開き,背をこちらに向けて隣で寝転がっていた三日月の肩を力強く掴み勢いよく上を向かせ押さえつけた。驚いて見開かれたその目は案の定濡れていた。もうそんなのどうだっていい。
 今度は乳毛のあった乳首を目に焼き付けて,覚えておこうと誓った。
 その後は猿の様に腰を振り続けた。乳毛のことを考えると,ムラムラは収まらなかった。
 どうしてあの時抜いてしまったのだろう。自らの手で乳毛を引き離す必要は無かったのに。今すぐまた生えてこないかな,乳毛。
 三日月の慟哭する声が聞こえるが,そんなことより俺には乳毛が大事だった。

 その後は何発やったかなんて数えていないけど,その全て膣に出したのは知っている。
 疲れた俺はもう帰ることにした。自分の元いた場所じゃないと,どんなに疲れていようと眠れない性質だったのだ。
 それからの三日月のことは知らない。久しぶりに見に行こうかなんて考えた。
 今度は走ることもなく,ゆっくり向かう。ゆっくり,ゆっくり宇宙の流れに添って。

 しかし三日月は居なかった。否,三日月ではなくなっていた。妊娠して臨月,いや満月になっていた。
 あの日,俺がムラッとした三日月は何処にも居らず俺は絶句していた。俺は満月野郎じゃなく三日月に会いたかったんだ。一目見たら大人しく帰ろうと思っていたのに。
 俺は泣きたくなった。そんな物堕ろせばよかったのに。
 そんな俺にお構い無しに冷たさをまとった笑顔で。

「貴方の子ですよ」

 俺はそんな物望んでない!
 俺はいっそのこと流れ星,と言うより隕石になってしまおうと地球に突撃した。

 しかし,地上につく前に大気圏に突入して燃え尽きた。