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グレンと迷い道




 任務帰り、私は帰路を歩く。はぁ、と息を吐く度に白く色付いた。カツン、カツン、と歩く度に響くピンヒールの音。



 雪を見てると不意に思い出した。私の、大切な人。親代わりでもあり、私の、好きな人。立ち止まり、空を見上げると沢山の雪。




 目を閉じればいつでも思い浮かぶ。殺されそうになった私を助けてくれたグレン中佐。それから眠れない日や泣いてる日にはずっとそばにいてくれた。



 いつから、だろうか。グレン中佐を男性として意識し始めたのは。毎回言われる家族、という言葉に胸が痛む。私は家族、じゃない。



『 あれ、 』



 いつのまにか、知らない道。四方見てみれば十字路。あー、何でこうなったんだろう。原因は、分かってる。いつも私の思考を妨げる、人物。



 端末を取り出し、連絡先の最初に出てくる一瀬グレン、と言う名前。冷たさで悴んだ指先でその文字を触った。数秒のあとになるコールに少し、緊張した。









「 もしもし 」

『 ナマエ、です。 』


 家で仕事場から持ってきた資料を眺めながら寛いでいると鳴り響いた規則的な着信音に椅子ごと振り向いた。



 手に取り、表示されている文字を見ずに電話に出た。すると聞こえてきたのは震えたナマエの声。数年前、俺が拾った子供。



 電話をしたのはいつぶりだろうか。滅多にかけてこないあいつはかけてきたとしても、毎回任務の報告だけ。少しだが、期待する自分に虫酸が走る。



「 んで、何かあったのか。 」

『 …別に、恩着せがましいグレン中佐と話をしようと思っただけです。 』

「 なら電話かけてくんなよ。 」

『 冷たいですねグレン中佐。 』



 いつものことだろ、と言えばクスリと笑い声。椅子から立ち上がり、カーテンに手をかけ、外を見てみれば十字路の真ん中に立つ人影に目がいく。



 珍しい金髪に、見慣れた軍服。カーテンに手をかけたまま、その人影に目をやった。薄ら笑いを浮かべていれば聞こえてきたのは真っ直ぐな声。



『 いつも通る道なのに、貴方のことを考えていたら迷ってしまいました。 』



 その言葉に、軽く目を丸くさせた。ふ、と口許に笑みを浮かべ、話した。



「 それはご苦労なこった。 」



 数分後に近づいてくる足音に、少なからず嬉しさを覚えた。




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