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■フェリドさんとクリスマス
雪が降り積もる寂れた街中を一人歩いていく。コートを着ずに軍服を身に纏っている私は久しぶりの寒さを感じ、息を吐き出すと白い吐息が目につく。
こうした雪降る日は吸血鬼の出現率が遥かに落ちる。拠点である街中はクリスマスで賑わい、男女が愉しく暮らしている。あの日みたいに、愉しく。
拠点の街中で過ごすのも悪くはないかもしれない。けど、今日は静かに、一人になれるところへ行きたかった。自分の部屋ではない、何処かへ。
優達、如月達にクリスマスパーティーに誘われたが、断った。ふと横を見てみれば白い雪を背景に鏡に映る、私の姿。真っ正面に立ってみると実感させられる。
『 少し、背が伸びたかも。 』
サンタさんが身長をプレゼントしてくれたのかな。なんて、乙女みたいに考えてみるがもうそんな年じゃないことくらい分かっている。
鏡を見ることをやめ、寂れた街中を一人歩いていく。冷たい風が頬を撫でれば少し身震いをし、冷たくなった指先を暖めようと息を吹き掛けるもやはり冷たいまま。
こんな寒い姿、桃山に見られたら怒られるんだろうな。何でそんな格好してるんですか、って。たまには怒る側じゃなくて、怒られる側もいいかも。何て考えていたら目の前に現れた銀髪の男に視線を奪われた。
「 こんばんは、ナマエ。 」
『 こんばんは、バートリー。 』
「 あはぁ、こんな日こそ名前で呼ぶべきじゃないのかい? 」
とおどけてみせるフェリド。脳内ではフェリドと呼んでいるけれど中々呼べない。グレン中佐は小さい頃から鍛練に付き合ってもらっていたし、なれているけれど他の男性は別だ。
『 そんなことより、何をしに来たのかしら? 』
「 今日は何の日だと思ってるんだい? 」
『 …さぁ? 』
分かっているけれど恥ずかしいから言えやしない。メリークリスマスだなんて恥ずかしい言葉。するとフェリドは此方に近付き、私へ手を伸ばす。
「 メリークリスマス、ナマエ。 」
言葉のあとに、首もとに冷たい感触。首もとを見るとプレートのネックレス。手にとってよく見れば達筆な英語でメリークリスマス、12/25と掘られており、裏には私の名前とフェリドの名前。
私の名前はともかく、何故フェリドの名前が書かれているのかが分からなかった。けれど、何故か心がほっこりして、嫌とは感じなかった。寧ろ、嬉しいと感じた。
「 僕を殺すのは君。君を殺すのは僕だからねぇ。 」
『 …そう。 』
素直にありがとうとは言えない私は至近距離にいるフェリドの後頭部へ片手を回し、己の首筋へ引き寄せると耳元へ言葉を囁く。
『 メリークリスマス、フェリド。 』
「 あはぁ、メリークリスマス。 」
首筋に暖かさを感じた後にブチりと肉を突き破る音。嗚呼、誘惑しているような快楽に目を閉じれば離れていく暖かさ。
うっすらと目を開けると大きな手で覆い隠される。次に、感じたのは唇に感じた柔らかくて、暖かい感触。自分の血で汚れただろう鉄臭い口付けに気持ちが昂って思わずゆっくりとフェリドの背へ両手を回した。
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フェリドさんとクリスマス、どうでしたでしょうか。そう言えば今日クリスマスだなー、と思い思い付きで書いてみました。長編ヒロインでしたが、上手く書けたかと思います。ヒロインはフェリドへの恋心に気付いていませんが、フェリドさんはヒロインへの恋心に気付いてます。この作品は歌い手の鹿乃さんが歌っている、メリーメリーと言う曲を聞きながら書かせていただきました。もしよろしかったら聞いてみてください。
[ BacK ]