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一途な黒くん



「 ッ、ナマエ!おい、死ぬな! 」

『 黒…、あなたは、にげ、て…。 』




 こうなったのは、ほんの数分前のことだった。夕方に猫の所に集まって、いつも通り黄に言われたことを成し遂げていた。




『 これで全部…だよね。 』

「 嗚呼、黄からの情報によると計四人…殺した人数は四人で丁度だ。 」




 手帳を見てから倒れている四人を指をさしながら数を数える黒を見てフードを外して微笑んだ。手にとった彼の手は少し冷たくて、でも握り返してくれたときは何だかとても暖かったのがわかる。




『 帰ったら何しようか。 』

「 疲れたから寝る。 」

『 …そっか。 』




 手を握り合ったまま現場から離れて他愛のない話をしながら帰路を歩く。疲れたから寝る、という彼の言葉に寂しいという気持ちが心に募っていくのがわかるが首を横に振って雑念を振り払った。




「 そういえば、今日誕生日だったな。…後、三十分…か。 」

『 あ、覚えていてくれたんだ。…初めてだよね、黒からそんな言葉が出るなんて。 』

「 俺だって人間だ。好きな人くらい祝う気持ちだってある。 」

『 今までは恋人同士じゃなかったもんね。 』




 えへへ、と無邪気な笑みを浮かべる私を綺麗な瞳で写す彼を見て、胸が高鳴った。ずっと、このときがなくならなければいいのに、なんて思う私は我儘でなんて愚かなんだろうと今思う。




「 …早く、帰ろう。 」

『 うん、早く帰って寝よっか。 』




 甘い雰囲気は崩れ去り、手を引かれて再び歩き出した。何だか私の手を包んでいるこの手の体温がとても暖かく感じられて心がふわりと暖かくなった。幸せだな、私は。好きな人と出会えて、こうして一緒に居る。




 最初は黒は銀のことが好きだったのかなって、勘違いしていたけれど本当は違うことだった。普段顔に感情を表さない彼が、二人っきりのときに告白してきた。夏の夕暮れで、夕日が見える坂で。




 あの彼の頬の赤みは羞恥からの赤みによるものなのか、それとも、夕日に照らされて人工的に見える赤みだったのかは彼しか知らないのだろう。そんな些細なことも全て知りたいと思うのは当たり前のことなのだろうか。




 初めてのキスは甘い苺のような味がしたのを覚えている。唇に塗っていた苺のリップクリームの味だった。あ、なんて破廉恥なことを思い出しているんだろう。ああ、もうだめだなこりゃ。




 契約者に、心なんて必要ないのになぁ。それでも、彼の傍に痛いと思う自分がいて、でも彼の傍に私がいたら彼がダメになってしまうのではないかと思う自分も同時に存在するわけで。




「 …どうかしたのか。 」

『 ううん、私って本当に黒のことが好きなんだなぁって。 』

「 俺も、お前のことが好きだ。 」

『 うん、知ってるよ。ねぇ、黒、 』




 胸に、何かが突き刺さった。そして、うつ伏せに倒れ伏す。驚いた彼の顔が倒れる寸前に他に見えた。ああ、殺し損ねたんだ。すると黒が殺しそこねた相手を殺し、こちらに駆け寄った。




「 おい、おい! 」

『 ね、ぇ…黒、わた、し…ね…? 』




 ずっと、死んでもあなたを愛してる。その言葉は声には出なくて口パクになってしまった。頬に、暖かい雫がポタリと落ちた気がして、目を閉じた。そして、唇に暖かい体温が、重なった。




「 愛してる、これからも、ずっと。 」




 貴方の微笑みが、瞼の裏に浮かんだ。





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 初の死ネタ。黒くんが好きなので書かせていただきました!




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