『 流石赤坂ね。…私が使ってた鬼呪装備を使いこなすなんて。 』
「 …あんたがやってたこと、そのまま引き継いだだけだ。 」
吸血鬼の攻撃を受け流し、首を切り落としたりを繰り返しながらを奥へ進んでいく最中、私は赤坂に話をかけた。
『 ねぇ、赤坂。 』
「 なんだ。 」
『 もし、もしもよ。…私が死んだら、如月に後を任せようと思うの。 』
私の言葉に赤坂は立ち止まる。どう思ったのかは私にはわからないけれど、先の話をするのも重要なことだろうと思ったのだ。
胸ポケットから小さな鍵を取り出すと後ろから赤坂の手に握らせ、振り向こうとする赤坂に振り向かないでと制止をかけた。今、振り替えってほしくはなかった。
『 パートナーの貴方にしかできないことよ。…私が死んだら、私がこの世界にいた証を貴方に消してほしい。 』
「 …。 」
『 頼めるわね。 』
「 …了解した。 」
ありがとう、と声をかけると共に溜まっていた涙が落ちて地面に染みを作った。乱雑に涙を拭い、鬼呪装備を肩に担ぎ直すと再び歩き出した。
「 あはぁ、久しぶりに会えた。 」
「 …。 」
「 ミカくん、邪魔しちゃ駄目ですからね。 」
一方、ビルの屋上ではフェリド・バートリー、そしてミカエラがナマエ達を見下ろしていた。先程の出来事を見ていたフェリドは久しぶりに戦えるのだと内心楽しみにしていた。
フェリドの脳裏に焼けついている昔の記憶。幼い頃のナマエの血を吸い、復讐の心を根強く植え付けた張本人であること。ナマエを見ているだけでも咽が疼く。
早く久しぶりにナマエの血を吸いたい、という真っ直ぐな欲求に理性が崩れそうになる。今もまだ残っているだろう、昔自分がつけた吸血痕。その上からかぶりつくのも悪くない。
だが、自分の見ている先には茶髪の男の姿。邪魔だな、と思いつつつまらないとでも言うような表情を浮かべるフェリドを他所にミカエラは心に疑問を抱いていた。
「 姉さん…? 」
自分と同じ金色の髪。整った顔立ちに僕とは違う紫色の目。小さい頃に見た姿は大人になってて…嫌、もしかしたら違う別人かもしれない。
姉さんの名前だって脳裏に焼き付いてる。僕の一番大事な人だから。今も不意に思い出す、姉さんの笑顔。他人に見せる笑顔とは違う、僕だけに見せる笑顔。
姉さんは、僕が生まれてすぐ養子に迎えられたらしい。年齢が同じだけど、僕は姉さんと呼んでいた。___僕が大きくなって、あの悲劇がおこるずっと前に姉さんは別の孤児院に棄てられた。
てっきり同じ孤児院に捨てられるかと思ったけど、僕は違う孤児院に棄てられた。もう二度と見られないと後悔もした。
するとフェリドはおりるよ、と言って下へ降りていってしまった。黙ってついていけばあの二人の後ろへ着地し、僕はフェリドの後ろにつく。
着地音に反応した二人は振り向く。こちらを振り向くまでの間の時間が妙に長い気がして僕の鼓動は早くなる。もし姉さんだったらどうしよう、と思考も混濁していく。
急かす鼓動と思考
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