「 ねぇ色崎、 」

「 なんだい、極彩 」

「 今日は自棄に暗いのね。いつも私と会うときは厭らしい顔で笑うのに。 」



 桃山を落ち着かせ、眠りについてからすぐに鬼呪装備の極彩に会った。真っ白なこの世界が、俺は嫌いだ。何もない、全てがないこの世界。



「 …リーダーがいなくなったんだ。 」

「 ふぅん? 」



 至極つまらなさそうに俺を見つめる極彩を横目に俺はリーダーから貰った赤い毛糸をポケットから取り出すと手のひらで見つめた。



「 あの日の後、任務帰りに四人でリーダーがいた場所に行ったけど、何もいなかった。 」

「 亡骸をヨハネの四騎士が食べた可能性もなくはないわね。 」

「 …もしかしたら、何処かで生きているかもしれな 」

「 それはないわよ。 」



 俺の言葉を遮り、それはないと断言する極彩を俺は見つめた。普段見せない冷たさを宿した極彩の瞳は、鋭く俺を見つめる。目線を逸らすと極彩は俺の前にたつ。



「 よく考えてご覧なさい。 」

「 例え生きていたとしても、あの夥しい量の血を見た限り、重症を負っていたのは間違いない。 」

「 そこで貴方に質問。 」

「 貴方は吸血鬼です。血の匂いを嗅ぎ付け、辿り着いた先には瀕死の重症を負っている人間がいます。さて、貴方はどうする? 」



 俺が吸血鬼の立場で、瀕死の重症を負った人間がいたら…迷わず、血を吸い付くして殺してしまうだろう。それを伝えれば極彩は笑みを深め、話す。



「 そうでしょうね。血が沢山出ているんだもの。美味しそうに見えるのは当たり前よ。 」

「 もし、物好きな吸血鬼がいたら家畜扱いとして助けて自分専用の餌にするかもだけど。 」

「 あ、そもそもあの重症じゃ動けないわね。吸血鬼に殺されたとして、亡骸が残るはずだものね。 」

「 じゃあ、残る答えは… 」



 瀕死の状態のリーダーをヨハネの四騎士が食べた。それしか考えられない。ぐ、と奥歯を噛み締めると俺は手のひらにある赤い糸を見つめた。



 目を閉じるといつでも浮かんでくる、リーダーの笑顔。背後をとられ、殺されそうになったキーさんを助けようとリーダーは最後の力を振り絞って鬼呪装備を使った。



「 極彩 」

「 ふふっ、なぁに? 」

「 力をもッと寄越せ 」



 もう、仲間を失わないくらいの力を。俺より幾分か小さい極彩に手をさしのべた。それを掴む極彩はそれを待ってたかのように笑い、俺を引き寄せ、首に両手を回すと話し出す。



「 あっははッ!それを待ってたの!貴方が憎しみを増幅させ、私に力を求めるのを! 」



 すると、唇に柔らかい暖かさ。目の前には閉じられた両の目があり、離れていく唇は直ぐ様動き出す。



「 もっと力に溺れなさい、色崎。 」

「 憎しみを糧に、力を求めなさい。 」



 目の前にある、禁断の果実に俺は手を伸ばした。


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