夜中、私はフェリドがよく使っている書物室へ足を運んだ。本来ならあまり出歩くなと言われているがらあの下弦、いや、アリアを見たあとではいてもたってもいられなかった。



 きぃ、と音を立てて木製の扉が開く。廊下に誰もいないことを確認すると扉を極力音を立てないように閉め、私は真っ暗闇の書物室を見渡す。



 電気をつけても不意に通りかかった誰かが入ってくるかもしれない為、予めフェリドの部屋から借りてきた蝋燭立てに蝋燭を立て、マッチで火をつけると奥のミニテーブルへ置く。



 棚の端から見ていけば英語で書かれた文字。それを見て不意に思い出したアリアの言葉。「 右奥の棚から数えて六番目。 」だったか。



『 五、六……ここかしら。あ、これだけ青い。 』



 六番目の棚は全部の本が赤色の表紙なのにも関わらず一冊だけ青く、達筆な文字でバートリーと英語で書かれていた。手に取ると厚みも程好く、あまり重くはなかった。



 部屋で読もうかと思ったがフェリドが帰ってきたら誤魔化しきれない。さっそく中身を見てみれば英文で埋め尽くされているページが見え、私は指でなぞった。



 アリア・バートリー様。フェリド・バートリー様の後に生まれ、病弱であまり泣かない大人しい弟君でしたた。兄弟のお父様は厳しく、アリア様に決して優しくしませんでした。男なら強くあれ、と毎日のように仰っていました。



 アリア様は大きくなるにつれて段々と自分から他者に近付こうとしなくなり、次第に悪い噂がたち始めました。アリア様は然程気にしてはいませんでしたが、背中が何処か寂しげでした。



 ×月×日、アリア様が上機嫌な様子で帰ってきました。聞きだせはしませんでしたが、酷く嬉しそうでした。何かあったのでしょうか?



 ×月×日、アリア様が帰ってきません。



 ×月×日、まだ、帰ってきません。



 ×月×日、____ _ ー 。



 ここからは古くなっていてもう読めなかった。メイドの日記と言うことは分かった。アリアはこれを読んでほしかったのだろうか。文字が掠れて読めないページを見てみればふ、と蝋燭の火が消える。



 途端に足音が近づく。本に夢中で扉が空いたことにすら気付かなかった。本棚に本を戻す余裕もなく、私は視線を巡らす。此方に近付いてくる足音に慌てて扉へ向かうが慌てるあまり本を落としてしまう。



『 っあ、……?! 』



 ドンッと背中に衝撃が広がる。顔をしかめていると首筋に熱い吐息が掛かり、思わず声を漏らしてしまった。誰、と聞く前に耳元に囁かれた声。



「 いけないなぁ……内緒で散策だなんて。 」

『 ば、バートリー……!?ひ、ぁ、っ! 』



  途端に感じた快感。ぐり、と短いスカートの上から膝で陰部を刺激され、思わず声を出してしまう。益々刺激され、吐息が出ると共に喘ぎ声も漏れる。



『 ん、ぅあ、は、ぁっ……や、 』

「 あはぁ、その顔イイねぇ…あ、もっと楽しいことしようか。 」

『 んぁ、な、にっ、やだ、バート、り、 』



 離れていく刺激に吐息を漏らす。暗闇からでもうすらと分かる、妖艶な赤い目。近付いてくる顔から背くと途端に首筋へ這わされる、フェリドの舌。昨晩の吸血痕を舐められればびくりと腰が跳ねる。



「 嫌、このまま堪能するのもイイかなぁ〜、 」

『 ふぁ、や、今す、ったら、んぁ、っ! 』

「 あはぁ、今夜はよく乱れるねぇ…血も甘くて美味しい。 」



 首筋に埋まる熱を持った牙に自然と涙が出る。そして、私の手は無意識にフェリドの頭へと手を添えていて、まるでもっと、とねだっているかのようで恥ずかしくなる。



『 んぅ、 』



 もう何がなんだか分からなくなる。は、と吐息を漏らしていれば降ってくるフェリドからの口付けを受け、首に手を回す。次第に深くなる口付けに、やめられなくなっていく。



「 淫らだねぇ、ナマエ。 」



 リップ音を立てて離れていくフェリドを見るも余韻が強くて言われた言葉が理解できなかった。再び近付いてくる唇にかぶり付いた。


求めて全身で語ってよ
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