『 だれか、だれか 』



 また、この夢。幼い私が大人のいなくなったこの街で、さ迷う夢。ボロボロになった手足を無理矢理動かして助けを求める夢。



「 おや、まだ子供がいたなんて。 」

『 ひ、きゅ、きゅうけつき、 』



 ___フェリド・バートリー。幼い私の目の前にいる銀髪の男。首を掴み、上へと持ち上げると露出している肩へ噛み付くと血を啜る。



 声は、自然と出なかった。目の前にいるフェリドと幼い私に、声をかけてあげる余裕なんてなかった。嗚呼、そうだ、地面に倒れ込む私にあいつは、



「 大きくなって僕を殺しにおいで。 」



 嗚呼、憎悪が沸く。いつの間にか握っていた武器は黒い邪悪さを漂わせていた。すると首に回される幼児の両腕に私は目を伏せる。



「 今更何を思うの? 」

『 __下弦。 』



 目を開けないままでいると両手で目を覆い隠され、開けても視界は真っ暗だ。これは夢だ、過去の記憶だ、これは。誰でもなく、私の記憶。



「 あの時、僕を封印してどうだった? 」

「 快楽を覚えたでしょう? 」

「 とても、清々したでしょう? 」

「 血が騒いだよね?もっと、って。 」



 耳元で響く毒の声に身体が小さく反応を示した。あの日の出来事が鮮明に蘇る。下弦を、この手で殺した日の事が。



 綺麗な赤髪をした下弦と出会ったのは何年か前。錠剤を使用し、使用時間が切れてしまい諦めていた時に血を吸われた。血が気に入ったらしく、生かされた。



 何回か会ったりもした。最後にあった日は、赤い満月の日。私の部隊は全滅し、下弦の部下も全滅。二人きりの静けさに緊張をしながら武器を構える私に下弦は言葉を吐いたんだっけ。



「 行こう、僕と。君はそっちにいちゃいけない。 」

『 覚えていたの。 』

「 まあね。 」

 

 するとツキリ、と痛む首筋。徐々に気持ちよく感じてくるのは正直言うと嫌ではなかった。血を少量吸い、満足した下弦は口を離すと抱き締めてきた。



「 もう、逃げられないね。 」



 ふ、と意識が沈んだ。



いつか知る事ができたら、
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