『 …で、私は吸血鬼の姿で過ごせというのね? 』

「 うん、吸血鬼の餌食になりたかったら帝鬼軍の服装でも構わないけど。 」

『 着るわ。…これ、裾長すぎじゃ? 』



 あのあと、フェリドの部屋でどう地上に出るか作戦を練っているとフェリドは吸血鬼の姿で取り敢えず過ごすと言う方法。服装は誤魔化せても、香りとやらは大丈夫なのだろうか。



「 それ、僕の服だからねぇ。 」

『 …っ、じゃ、じゃあ、大丈夫ね。 』



 フェリドの香りがしているなら別に心配はないだろう。それより、牙だ。吸血鬼は牙が見えているのが基本。私には吸血鬼の牙は生えてないのだから。口をモゴモゴとさせ、八重歯を舌でさわっているとフェリドは顔を近づけてくる。



「 あはぁ、じゃあ、いっそのこと君もミカくんと同じく吸血鬼にしてしまおうか。 」

『 ちょ、ば、バートリー?! 』



 がり、と音がした。ベッドに押し倒された私の身体は強張って動かず、私は目の前にある繊細なフェリドの顔を見てることしか出来なかった。ぽたり、と頬に滴が落ちる。



『 駄目よ、バートリー。 』

「 なんで? 」

『 貴方を討つのは私だもの。…私が負けたら、貴方の好きなようにしても構わない。 』



 目を丸くさせたあとに口許に笑みを浮かべるフェリド。体を退けると口内にある血液を飲み下し、そして毎回あってる時みたいに陽気に喋り出す。



「 あはぁ、そうだったねぇ。じゃあ、その時は僕が勝つ。 」

『 あら、楽しみね。 』



 フェリドは私の頬についている血を指先で拭う。優しい手付きがくすぐったくて思わず身をよじる。すると、フェリドが不意に動きを止めた。



「 そう言えば、ナマエの名字ってなんだっけ? 」

『 …私は親が死んで親戚に引き取られ、養子にいってからは進藤って名乗ってるわ。結局、百夜孤児院に棄てられたけど…実は、百夜孤児院は二つあったみたいで。別の方に弟は預けられたの。 』



 進藤ミカエラ。私の、大事な弟の名前。血は繋がってないけど、大事な弟。別れ際の泣き顔が脳裏を過る。嗚呼、会いたい。


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