『 ん、? 』
目が覚めると白い天井に、大きな白いベッド。辺りを見渡せば見知らぬ家具や壁紙やらがあり、寝起きの頭は突然の景色に付いていけず一瞬の頭痛が襲う。
「 …ん… 」
『 …え、 』
声がした方を見てみれば綺麗な銀色の髪にとがった耳。毎回見る綺麗な赤色の目は閉じられていて何処かしら幼げ。寝ているのか、と手を伸ばそうとするも、右手は動かなかった。
見てみると、大きな手に握られている自分の手。動かそうと揺らしてみると途端に握られる、手。私たち人間とはちがく、冷たさを宿した手には、暖かさがあった。
『 ふぇ、フェリド。 』
一度、一度だけ彼の名前を口にした。戸惑いがちになってしまったけど、確かに口からでた彼の名前。自然と、頬が緩むと同時に赤く染まっていく。嗚呼、何だろうこの気持ち。
ほっこりするような、暖かい気持ち。そっと、見えているフェリドの耳に小さく口付けを落とし、私は薄く開いている唇に目が行く。嗚呼、きっと変な病気に違いない。
「 キス、してくれないんだぁ? 」
『 お、起きてたの…バートリー。 』
どく、どく、と心臓が音を立てる。苦しいくらいに。彼が私の上に跨がると頬に手を添え、撫でる。するとフェリドは告げた。
「 君は僕が救った。血も与えた。 」
『 え…? 』
「 大丈夫、ちゃんと人間の血だ。 」
一瞬、自分がもう人間ではなくなったのかと思った。安心して安堵の溜息を吐けば、だけど、とフェリドはつけたし、私の首から心臓まで指先で撫でる。心臓に到達した指はとんとん、と軽く叩く。
「 君の香りが一段と濃くなった。…よって、僕ら吸血鬼は君の香りに当てられてよってくるに違いない。そ・こ・で、 」
いい取引がある。とフェリドは告げ、私は眉を潜めた。あの夢を見た後、私はどうなったのだろう。鬼になる直前だったのか、はたまたなにも起こらなかったのか。
「 定期的に僕に血を寄越すこと。あはぁ、勿論他の吸血鬼にもだめ。僕だけの血だ。 」
『 貴方も物好きね。…貴方に定期的に血をやれば、私の香りとやらは薄まると言うの? 』
「 僕の予想だけどねぇ。…どう?乗ってみない?どうせ同じ穴の狢なんだ。 」
フェリドは誘惑するかのように甘い声音で囁く。危険な船に乗るのも悪くはない。安全な船もいずれは壊れる世の中、いつ壊れてもおかしくない。そっとフェリドの後頭部を右手で引き寄せ首筋に誘導をした。
牙が私を貫いていく。甘い快楽に身を委ねながら私は私のことを嘲笑った。嗚呼、下弦が言っていたのはこのことだったんだ。私がつかんだのは、
悪魔の手
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