降り下ろされる、刀身が自棄にスローモーションに見えた。咄嗟に銃を落として両腕で身体を守ろうと腕を交差させ、目を固く瞑った。



『 時間を止めなさい、下弦餓鬼。 』

「 え…? 」



 そして響いた、弱々しくも凛とした声が辺りに響いた。背後を振り返ると息が途切れ途切れのリーダーの姿。口からは血、そしてお腹からも出ていた。



『 ここは、私が食い止める。…貴方たちは、撤退しなさい。 』

「 あ、主?!嫌です、私も…! 」



 リーダーに近付こうとする桃山の手を掴んだ。行くのを制された桃山は私の手を振りほどこうとするが私の顔を見たとたん、大人しくなった。



 リーダーのあの状態では時間を止めていることも数分と持たない。奥歯を噛み締め、後ろ髪引かれる思いのまま、その場を後にした。



『 ごめ、んね…皆… 』



 時が、動く音がした。



 ___ポーン、とピアノの音がした。その音は徐々に大きくなっていって、私は振り返る。地面は水が波紋を生むように動く度に波紋が広がっていく。



「 ねぇ 」

「 君は、どっちをとる? 」

「 悪魔の手か、天使の手か。 」



 振り返った先には、吸血鬼の姿をした下弦。そして、私の反対方向にはボロボロの姿をした、幼い頃の私。



「 君は、まだ過去にどっぷり浸かったままでいるつもり? 」

「 あの狭い寂れた世界で、一人ぼっちでいるの? 」

「 永遠に、憎悪だけを抱えて。 」



 また、ピアノの音がした。それは私をどちらかに導く音で、私は幼い頃の私に振り返った。ニタリと笑みを浮かべ、両手伸ばしてくる私自身に、ナイフを降り下ろす。



『 おやすみ、過去の私。 』



 ピアノの音が一段と強くなった。どしゃり、と幼い頃の私は倒れていく。胸には刀身が全て埋まったナイフ。それを見下ろしていれば背後から回される、腕。



「 そうだ、君はそれでいい。 」

「 それでこそ僕が認めた人間だ。 」

「 僕の、俺の、愛しい人形。 」



 ピアノの音が止んだ。嗚呼、悪魔の囁きが聞こえる。私は、わたしは、ワタシハ、


また、
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