『 …気のせい、か。 』



 あのとき見えた銀髪を追ってここまで来たのはいいものの、やはり何もない。ビルの影をあちこち探したが見当たらない。



 するとお腹に走る、鋭い痛み。下を見てみれば私のお腹から飛び出ている、銀色の刀身。途端に口からでる血液。口を抑える余裕もなく私は倒れ込んだ。



『 み、な、にげ…、 』



 途切れ途切れに呟いた言葉は、皆には聞こえない。ゆっくりと降りる目蓋に、少しの絶望を。



「 …主? 」

「 ん?どうかした?桃山 」

「 今、主の声が聞こえた気が…いや、気のせいだ。 」



 桃山は不意に振り返る。が、やはり誰もいない。フルートをしまおうとした瞬間、突然はいるインカムからの連絡に直ぐ様応答した。



「 桃山、色崎! 」

「 どうしたのキーさん! 」

「 直ちに拠点に戻れ!貴族級はいないが吸血鬼が嗅ぎ付けてきた!今赤坂が百夜を気絶させて拠点に戻っている! 」



 それを聞いた色崎と桃山は互いに頷き合い、桃山は幻術を解く。起き上がった君月と与一を見ると状況を説明し、今すぐ戻るように言った。



「 俺たちで食い止めるから拠点に戻って。…そうだ、くれぐれも余計なことは言わないでおいて。 」

「 残り二人も拠点に戻させる。早く行け! 」



 焦りが見えている君月と与一の顔。それを見たあとに二人は駆け出し、如月と合流するために探し始めた。



「 ん…、ここは、 」

「 やっと起きた!みっちゃん、一先ず退散です。吸血鬼が来たんです。 」

「 わ、わかった! 」



 三葉が起きた時には如月の姿はなく、シノアの必死な姿だけがあった。急な剣幕に対処できなく退散して状況を把握した方がいいだろう、と頷けば二人は駆け出す。



 如月の姿が見えないのはきっと仲間を探しにいったからだろう、と認識しては拠点に戻る。二人の遥か上、ビルの屋上から見下ろす影はせせら笑いを浮かべていた。



「 キーさんッ!駄目だ、埒があかない! 」

「 ッ…リーダーが見つからない!いいから排除し続けろ! 」



 如月、色崎、桃山の三人は吸血鬼に囲まれている最中、自分達のリーダーの行方が分からず見付かるまで応戦することに。連絡もなしに一人拠点に戻ることはまずあり得ないだろう。と考えた如月は吸血鬼に銃口を向けた。



「 家畜が!餌の分際で牙を向くとは! 」

「 うるせぇよ、くそが。 」



 ドンッと音がし、吸血鬼の頭は吹っ飛ぶ。如月はショットガンを両手に構え、次々と吸血鬼を撃っていくがきりがない。油断した如月の背後に、飛び付く影。



「 死ねェッ! 」


傷は痛くて深い
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