『 ん…。 』

「 やっと起きたのかよ。 」



 ゆっくりと目を開け、視界に入ったのは明るい緑色の目と黒い髪。優だと分かるとそちらへ顔を向け、今何時だと聞けば昼の三時丁度だそうだ。



「 やっぱりぶっ倒れちまったじゃねーか。貧血、まだ治ってねぇんだとよ。 」

『 今回は仕方がなかったの。幾ら如月がいるとはいえ、四人では危ないもの。 』

「 信頼してんならいーじゃねぇか。それとそんな柔じゃねーだろ。 」



 ぶっきらぼうに告げる優に思わず笑いが出てきてしまう。優なりの優しさ、気遣いに感謝しながら窓の外を見ると雲一つない青空。



『 綺麗ね、空。 』

「 …おう、そうだな。 」



 中々続かない会話。苦笑を浮かべつつまだ幼げが残る優の横顔を見ていれば視線に気付いたのか逸らされる優の横顔。



 その行動が、いじけた時の弟の行動にそっくりで思わず笑みが溢れた。けれど、弟はここにはいない。ここにいるのは、優と私だけなのだから。



 そして不意に窓の外に見慣れた人物が病院内へ入っていくのが見え、自然と柔らかな笑みが溢れた。五分後に騒がしい足音が聞こえてくれば扉の前でピタリとそれは止まった。



『 入っていいよ、桃山。 』

「 は、はい。 」



 そっと扉が開かれる。私が入院したら即座に駆け付けてくれる桃山。大事な、私の唯一無二の仲間。恐る恐る近付く桃山は私に紙袋を差し出し、私は目の前にして首を傾げた。



「 入院中は暇だと思いまして…。 」

『 ありがとう、桃山。 』



 受け取ればずっしりとした重みがあり、本だと認識する。よいしょ、と枕元におくと今まで黙って私たちのことを見ていた優が急に話をかけてきた。



「 仲いいんだな。 」

『 そりゃあ、仲間だもの。 』

「 百夜も仲間と仲いいだろう。 」



 まぁ、なと口にする優を私は黙って見つめた。前線に出された頃の私と似通ったところがあって大分困難しているんだなと思わず口にしそうになる。



『 桃山、今月出された任務とかは? 』

「 特にはないと思いますが…柊家ならともかく、一瀬中佐は怪我人のチームを任務に行かせたりしないでしょう。この間は柊家からの任務でしたから行きましたけど…主は貧血で倒れてしまいましたし。 」



 最後の言葉に苦笑を浮かべつつごめん、と謝れば全くですよ、と返ってくる。すると桃山は背を向け、扉へ歩いていく。



「 私たちは、主が思っているより柔じゃないですよ。だから、だから、 」



 あまり、気負わないでください。と告げる桃山の耳は赤かった。笑みが溢れるのを我慢せずに桃山に笑いかけると私は黙って頷いた。


もう一回歩こうよ
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