▼ 此処はノスタルジヰ堂
『 ___どんな本をお探しですか? 』
古びた古書が本棚に陳列する中、ななしは店にやって来た男に話を掛ける。手に持つ本へ視線を巡らせたまま近付いてくる足音に耳を傾け、やがて聞こえてくる言葉に顔を上げた。
「 鬼のなり方が書かれた本を知らないか。 」
いかにも不器用そうな顔付きに絆創膏やら医療品で治療された頬。持っていた古書を閉じれば彼へ向き直り、隣にいる子供へと視線を向けた。
『 鬼のなり方が書かれた本?知らないですよ、そんな恐い本の事。 』
「 …そうか。 」
___鬼が書いたとされる本がある。
かつては一冊、今は幾重にも分かれてしまったそれには、目を通した者を同族とする為の作法が幾通りにも記され、
その本に惹かれた者はたちまちにその作法に手を出してしまうという。
___即ち 鬼と化す
『 もしかして、古書店を営む方ですか? 』
「 そうだよ!正太郎がやってるんだ! 」
「 …。 」
元気の良い子供の声。無邪気な声を聞きつつ彼へと視線を向けると黙り込む彼。手を焼いているのかと思うと苦笑いしか出てこない。
そして彼はお邪魔した、と呟くと子供の手を引き早々に去っていく。開く扉と共に匂う血の香りに妙な違和感を覚え、読んでいた古書に目を向けた。
『 さて、と。 』
来ていたシャツの上に軍服のような緑色の制服へ袖を通すと釦を閉め、帽子を深く被れば同じ色の外套を着用し、軟鞭と鍵を手にすると軟鞭を腰に掛け、外へ出れば鍵を閉め。
真夜中の街は殆ど人がいない。路地裏へと身を滑り込ませると邪気を感じる方へと歩み寄っていく。血腥い匂いを嗅ぎ付け立ち止まる。そこで軟鞭を手に取り___
『 そこまでです、鬼。 』
かぶり付いていた死体を他所に、ゆっくりと振り向く男。軟鞭を振り上げ、降り下ろせばしなやかな音を立て地面へぶつかる。
避けた男を確認しては直ぐ様腰についているホルスターから二本の銀のナイフを取り出し、駆け寄っては男の首へナイフを突き立て一気に左右へ引く。
噴き出す血飛沫が頬につき、口許についた血を舐めとると動かない鬼の死体を見下ろし、ホルスターへナイフを仕舞い、男の懐から本を取り出せば紙を挟み頭の横へ投げ棄て。。
『 __物語が華開く。 』
_____返品一切お断り。
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