佐疫先生







 さて、体育が終わった。皆を見てみるとやっと解放された…と言わんばかりの晴れやかな表情を浮かべている。その点に関しては同意だ。






 教室に戻るとそそくさと着替え、私はゆっくりとロッカーから音楽の教科書を取り出す。次は確か佐疫先生が担当だったはず。






 出席簿を手に第一音楽室へと向かうと最上階までの階段が私を迎えた。あー、上るのめんどくさいなあ、と思いつつのろのろ、と階段を上がり始めた。






 目的の第一音楽室に辿り着くと私は失礼しまーす、と声を出しながら扉を開けた。すると柔らかな笑みが私の心を癒してくれる。






「 やぁ、名前。谷裂の授業お疲れさま。 」




『 へへ、ありがとうございます。 』





 ピアノの傍から離れると私に近付き、頭に手を置くと撫で撫で、と頭を撫でてくれた。嗚呼、なんて優しい先生なのだろうか。まるで天使のようだ。






『 佐疫先生ッて優しいですよね。 』




「 そうかな?まぁ、ありがとう。 」






 ふわ、と優しい笑みを浮かべると佐疫先生は皆の方を向き、パンパン、と叩くと席についてと合図を出す。流石やるときはやりますね。






「 今日はラフマニノフの伴奏練習するからちゃんと聞いててね。 」






 号令をし、ゆっくりと席につくと佐疫先生がピアノの椅子に据わり、白い指先を白い鍵盤に滑らせる。響くゆったりとした音色に眠くなってしまった。






 あ、やばい、もう無理。と思った瞬間に目蓋が強制的にシャットアウトされた。シャットダウンしています…と脳内にリピートされた。






 ( シャットダウン完了しました。 )






 学級日誌 08 / 31 ( 月 )






 記入者名 : 名前






 開始時刻 : 14 : 55 〜 15 : 45






 授業担当 : 佐疫先生






 授業科目 : 音楽






 授業場所 : 第一音楽室






 授業内容 : マイエンジェル佐疫先生のピアノ聞いていたら皆寝ていて、起きたら皆の肩に小さな毛布が掛けられていて、皆の毛布を集めるのに疲れたのかマイエンジェル佐疫先生が椅子に据わって机に突っ伏して寝ていました。流石はエンジェル、寝顔までも可愛かったです。






 記入時刻 : 15 : 50









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