《 胸が痛いから 》






『 …行方不明の人を探すなんて骨が折れるよ…百目鬼、置き手紙か何か見当たらなかったの? 』



「 昨夜、キザキが探したが見当たらなくてな、きっと黒龍様は自分の意思で出たのではないかと…。 」



『 じゃあ、普通知らせてから行くとは思わない?知らせずに行くなんてよっぽど誰にも言えな…、 』





 誰にも言えない、となると彼の身近な人物ではないか、と話している途中で思い付く。もしかしたら、と思い隣にいる百目鬼に疑問を投げ掛けた。





『 黒龍が自室に籠りがちになったのはいつ頃から?誰からか手紙とか来ていた? 』



「 …確か、あの日の一件の次の日に手紙が来て、その日から…っ、もしや、黒龍様は…! 」





 どうやら百目鬼も察しが付いたようで弾かれたように顔を上げれば、どうして気づかなかったのだと、自分を責め立てるような表情を浮かべていた。





『 うん、私の予想からすると…クロエの所だ。 』





 きっと、手紙には脅迫紛いの文が書かれているのだろう。全くもって情けない。奪いたいのならば手紙なんかより会いに行けばいいものを。





『 …ジェハには頼めないな…。 』





 数時間前の事が頭を過る。声龍の血を身体に入れて、初めてあんなことが起きた。綺麗な緑色の髪の隙間から見えた暁の瞳に、欲の狂気が見えた気がした。





 貪りたいと言う狂気。それは声龍の心に一番ある感情だ。きっと、声龍の血を身体に入れてしまったことによって根強く植え付けられてしまったんだろう。





『 これを片付けたら、謝らないと。 』





 声龍の血を身体に入れたら最後、その血を一生求め続ける。心が満たされたと感じられようとも、身体はずっと求め続けるのだ。





『 行こう、助けに。 』





 どうか忘れないでいてほしい、貴方のそばには私がいると。









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