《 外見と内面 》
「 おかあさん、っ、おとうさん、ひとりにしないでよ、ぼく、ひとりはやだよ…っ! 」
「 だいじょうぶだよ、わたしがいるよ。 」
小さい頃から、傍にずっといたのは唯一の幼馴染みのアイツだけだった。綺麗な黒髪に、吸い込まれそうな紫色の瞳。明るい声音が特徴的で、何処にいて目立つやつだった。
「 いつもいつまでも、二人で年を重ねよう? 」
「 …そういう言葉、男が言う言葉じゃないのか? 」
俺は、アイツに恋愛感情等は抱いておらず、冗談半分だとアイツが言う言葉を受け取っていた。毎日のように言ってくるから慣れてしまっていたのかもしれない。
そんなある日、アイツの両親が他界した。傘をささずに雨の中空を見上げているアイツの頬は、涙か雨かもわからず濡れていた。いつも綺麗な黒髪は、びしょ濡れだった。
「 こればっかりは、やっぱりなれないね。 」
もう、声に出ないそれは俺ではどうしようもなかった。雨の中、無理矢理笑うアイツの表情は、哀しみにありふれていた。
「 心臓が痛いんだ。もういっそ死のうと思えたなら私はこうじゃなかったんだ。 」
どうせ死ぬくせに、辛いなんておかしいよね、ごめんね。そう言って笑う、幼馴染み。とても見ていられるものではなくて、俺は目を背けた。
「 さようなら、 」
胸がいたいから、下を向く昨日の私に出会うまで。
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