《 理想を溢した口 》






『 え…黒龍が、行方不明…? 』





 百目鬼と会って一週間後、あの桜の木の下で寛ぎながら月を見上げていると息を荒げながら駆け寄る百目鬼に告げられたのは黒龍が行方不明になったという知らせだった。





「 俺の部下、キザキからそう伝えられてな。…お前なら、何か知っているかと思ったのだが…どうやら何も知らぬようだな。 」



『 ごめん…兎に角、一緒に探そう?私も心配だし、それに黒龍も大変な事に巻き込まれているかもしれない。 』



「 恩に着る、声龍。 」





 息を整えた百目鬼は頷く。それにしても何故黒龍はいなくなったのだろうか。思い当たる節はなく、疑問だけが浮かび上がっていく中、切なそうに笑う黒龍が浮かぶ。





「 取り敢えず、今夜は休め。翌朝また来るから体力を温存しておけ。 」



『 わかった、勝手に一人で探しにいかないでね。 』





 背中を向けてから告げ、歩き出す百目鬼を見てからそっと呟く。遠ざかっていく背中を見つめたまま両手を胸の前できゅっと握り、目線を下に下ろしポツリ、一言漏らす。





『 …ねぇ神様、この世の不幸を一つ取り除いてみないか 』





 この一言で、声龍の血から解放されたら何れだけいいだろうか。





『 この声龍の血から逃れられたら何れだけいいか。 』





 そう、こんな血がなければ普通の子供のように、過ごせていたはずだった。あの頃に戻れたのなら、伝えたい。ハク達に、ごめん、って。





『 さあ、いこっか。…今頃寂しがってる、暴君さんに。 』





 その言葉は、始まりの法則 ( 合図 ) 。










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