『 寒いねー、最近。 』



「 そうだね。ナマエちん、手ー貸して? 」





雪の振る道を二人で歩みながら寒い寒い、と行っていると紫原くんは大きな手を差し出して手を貸して、と言ってくる。そっと手を差し出せば大きな両手で包み込まれて何だか暖かい気持ちになっていくのがわかった。





『 紫原くん、手大きいね。 』



「 ナマエちんはちっさいねー、俺の半分以下しかないじゃん。 」





眠そうな目を此方に向けて微笑みかけてくれる紫原くんを見つめ、そっと口元をマフラーに埋めた。きゅう、と大きな手で包み込んでくれる紫原くんが愛おしく感じて無性に抱きしめたくなる。





「 わ、ナマエちんどーしたのー? 」





大きな手が離れた瞬間に紫原くんに抱きつくと驚いたのか声を小さく漏らして抱きしめ返してくれる。暖かく、大きな身体に抱き締められるとやっぱり安心するなぁ、なんて思いながらむぎゅう、と力を強めた。





『 紫原くんが暖いから抱き締めたくなったの。 』



「 そっかー、じゃあくっついてていいよー。 」





するとぎゅうう、と抱き締められる力が強くなって途端に苦しくなった。このままでは窒息死してしまう、と考えてポンポン、と彼の背中を軽く叩いて離れるように催促した。





「 もー限界?ナマエちん弱いねー。 」



『 紫原くんが強いだけだよ。 』





確かに、男子に比べれば女子は弱いし、比べ物にはならない差があるけれど、紫原くんは例外だろうと感じるのは気のせいだろうか。紫原くんの身体から離れてそっと微笑みかけると眠そうな目で此方を見つめてくる。





『 紫原くん、バスケ頑張ってね! 』



「 ナマエちんのためなら頑張るよー。 」





雑談を交わしながら歩いていると家の前に到着し、ばいばい、と手を振ってくれる紫原くんにありがとう、と礼をいって手を振り返す。離れていく背中に、手を振り返すのをやめてそっと心の中で呟いた。





――好き。





はっきり言えなくてごめんね、いつか絶対言ってみせるから。





――君が好きだということ。









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