《 貴方からのさよなら 》







 水晶が割れ、ナマエがジェハの前に立つ。暁の髪は髪先から濃い紫色へと鮮やかに変化を成し遂げていく。そして、静かに開いた双眼は





『 嗚呼、喰い散らかせて。 』





 憎悪という暁の色に煮えたぎっていた。その姿は初代声龍のアカツキに瓜二つ。気付いた兵士は逃げ出すが既に遅く、背中にクナイを突き立てられ、倒れ伏していた。





『 …ジェハ、ジェハ、 』





 ナマエはジェハの上半身を両腕で起こし、小さく名前を呼びながら軽く揺さぶった。だがジェハの鼓動は既に止まっており、目も開かないままだった。





『 ジェハ、ねぇ、ジェハ、 』





 名前を呼び続けるナマエに影が差した。華奢な体つきをした片割れの妹、ヨナだ。その後ろに控えているハク達はただ呆然と眺めているしかなかった。





『 置いて、いか、ないでよ 』





 ポツリと呟かれた言葉は重く、そして心に響くものだった。ヨナは目に涙を浮かべ、やがては目尻を伝って地面へと落ちていった。





『 …独りに、しないで。 』





 ポタリ、とナマエの涙がジェハの目尻に落ちた。だが、ジェハは身動き一つせずに目も閉じられたままだ。ポタリポタリと涙が溢れ出す中、ハクは走り出しナマエの細い手首を掴んでは引き寄せ、そして抱き締めた。






「 アンタは独りじゃねぇ、俺がいる。 」



『 ハ、ク…? 』





 いきなりのハクの行動に驚き、目を見開くナマエ。ハクは抱き締める力を強めてから離れ、両肩を軽く掴んだまままナマエの瞳を見つめた。





「 …アンタは、独りじゃねぇから。 」





 そう告げてハクは離れた。ヨナは不思議そうにハクを見つめた。するとナマエはあることを思いだし、自分の右手首を見つめてはジェハの横に座り込む。





『 まだ君に想い、伝えてないじゃない。…伝えたら、君から離れるから、君は生きて、生き抜いてよ。 』





 小刀を取りだし、手首に滑らせては血を出す。それを口に含み、ナマエはジェハの唇に口付けをし、ジェハの口内に血液を流し込む。生きてほしい、と言う細やかな願いをこめて。





『 …ヨナ、ジェハを頼んだよ。 』



「 …ええ、分かったわ。 」





 そっとヨナは頷いた。ナマエは立ち上がり、紫色の髪を風で揺らしながら暁の色に染まった瞳を伏せ、小さく息を吐いてからセン・クムジの城へと歩き出した。









 / 


[ Back To Top . ]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -