《 独りにしないで 》







「 っ、追っ手か…!このままじゃ、ハク達がいる場所までついてきちゃうかな…っ、 」



「 待てッ、緑龍ッ! 」





 次々と矢が背後から飛び交ってくる中、ジェハは苦悶の表情を浮かべた。此処から跳躍して一直線に行けば早いのだが、樹海の中ではそうもいかなかった。





 困惑な表情を浮かべるジェハの足に、一本の矢が深々と突き刺さった。唐突な激痛に足が縺れ、地面に倒れ混むのと同時に、水晶が転がり落ちる。





 激痛に顔を歪ませ、出血によって霞む視界の中でジェハは水晶に手を伸ばすが背後に立つ兵士によってそれは叶わぬこととなった。ギリッと噛み締めた唇からは、血が滲み出ていた。





「 っ、あーあ、ここまでか、 」



「 悪いな、緑龍。 」





 弱りきった心臓に、鋭い刀身がゆっくりとめり込んでいく。それが完全に貫通した時にはもう、ジェハの瞳は伏せられ、顔には生気が現れていなかった。










「 ナマエ、 」





 真っ白な世界で佇むナマエに、背後からジェハが悲しげな表情で名前を呼ぶ。ナマエはゆっくりと振り返り、佇むジェハを見つめた。





「 ごめんね、 」



『 …?ジェハ、何が、 』





 謝罪の意味が解らないナマエは首傾げて聞き出そうと問い掛けをするが、ジェハは悲しげに佇んだまま、動こうとはしなかった。





「 君を、救えなかった。 」





 そう告げたジェハを私は見つめた。すると私の身体が光の泡となって消え出した。咄嗟に手を伸ばしてみてもジェハは掴んではくれず、伸ばした手さえも消え、完全に消える間際に見たジェハの表情は、





「 君を愛せて良かった。 」





 とても、穏やかだった。










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