《 愛されたいと叫んだ 》
「 ん…、ここは、どこ? 」
「 ここは夢の中よ、クロエさん。 」
紫色の長髪を靡かせ、怪しく微笑むアカツキは静かに小さな両手を後ろで軽く組み、目の前にいる困惑気味のクロエを見つめ、つい、と切れ長の瞳を細めてはクロエの容姿を品定めするかのように見つめた。
「 貴女、容姿は可愛いのに心が狭く穢く澱んでいるのね。どうりでギルの子供が好かないわけね。 」
「 なっ…、貴女誰よ! 」
「 私はアカツキ、貴女は声龍をご存知?貴女が不幸の底に叩き落とした女性よ。 」
アカツキは唇を緩やかに上げ、一歩一歩とヒールの音を響かせながら近付き、クロエもまた急なことに戸惑いを隠しきれずに合わせて下がっていく。問いかけにクロエは歪んだ笑みを浮かべた。
「 嗚呼、ナマエと言う子だったかしら。…私は何も悪くないわ、あの人を取ったあの子が悪いんだもの!私の方があの人の傍にいたのに馴れ馴れしく近付いて、挙げ句の果てに愛し合って! 」
「 穢く澱んだ心をギルの子供が愛するはずないと思うわ。愛し合う人を隔てる女性は誰からも愛されないに決まっているもの。 」
クロエはグッ、と唇を噛み締めた。眉を寄せ、腹いせに次々とアカツキを罵倒し始めた。愛されたいと思って何が悪い、傍にいてほしいと思って何が悪いといい始めるクロエを黙って見つめた。
「 崩れ落ちた細胞が、愛されたいと叫んだって、もう二度と私の声は君にはもう届かない。 」
アカツキは悲しげに目蓋を伏せた。伏せた目蓋の裏には悲しげに微笑み、背を向けて歩き出すギルの姿が鮮明に写し出され、自然と手に力がこもる。
" 「 いつか、君が隠している秘密を聞かせてね、アカツキ。 」 "
「 貴女何かに人を愛する資格なんてないわ。 」
アカツキは冷たい表情を浮かべてはクロエを突き飛ばす。突き飛ばされたクロエは焦る。焦らすように近付いてくるアカツキを怯えた目で見つめ、畏怖した。
「 求めすぎた者には罰を。…欲でこの世界をわたっていけるほどこの世界は甘くはないのよ。 」
世界を拒絶する言葉を紡いだアカツキは緩やかに口角を上げた。
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