《 添い遂げた世界 》







「 …助けにいきましょ、今度は絶対に。 」





 先程まで泣いていたヨナちゃんが立ち上がり、腫れた目から流れ出る涙を脱ぐって告げた。涙で歪んでいた表情はいつもの凛々しい表情に戻っていて、僕は心底驚く。





「 …奴の根城への案内なら任せろ、把握し尽くしている。 」



「 百目鬼も言っていることだし、そんじゃいっちょやるか。 」





 百目鬼とハクが続けて立ち上がり、土埃を払っては告げる。先程から一人で助けにいこうかと悩んでいた自分が馬鹿馬鹿しく思えてきて、口許が勝手に歪んだ。





「 …ジェハ、そなたはどうするのだ? 」





 まだ座り込んでいた僕にキジャくんが疑問を投げ掛けた。勿論、僕は助けにいくつもりだがみすみす彼女を置いて逃げた僕が彼女に合わす顔がないと、心の中で呟くがやはり助けにいきたい。その一心で立ち上がる。





「 勿論、助けにいくに決まっているでしょ。 」





" 『 ありがとう、大好きな皆。 』 "





 立ち上がり、告げた瞬間に彼女の声が耳元で聞こえた気がして僕は咄嗟に顔をあげ、後ろを振り返ったがそこにはやはり誰もいなかった。すると草木がざわめき、辺りを見渡した僕の耳に軽やかな声が響く。





「 あの子を、助けてあげて…緑龍、ジェハ。 」





 最初は耳を疑った。この場にいる誰でもない声。その声に頷いて必ず、助け出すよ。と心の中で呟いてから前を向き、歩き出す。声が聞こえた場所を去ることに後ろめたさを感じつつも、そのまま歩き続けた。





「 …緑龍、声龍のこと…頼んだぞ。 」



「 君が頭を下げるなんて珍しいね。…勿論、ナマエちゃんは僕が助け出すさ。 」





 目蓋を伏せれば思い浮かばれるナマエちゃんの微笑み。その微笑みが消えない内はまだ助け出す時間はあると言うことを今は信じていたい、嫌、信じたい。





「 昔、俺はアイツと約束をしたことがある。もしも私が迷路の中迷ったら手を差し伸べてくれ、とアイツは言った。…けれど、俺は差し伸べることが出来なかった…だから、お前が代わりに手を差し伸べてくれ。それがアイツにとって唯一の、 」





 ――光になるのだから。続けられた言葉に嬉しさと勇気を貰った気がした。口許が自然に緩み、穏やかな表情をしているのが自分でも分かる。隣にいる百目鬼を見てみるとそっぽを向いていた。





「 嗚呼、分かっているよ。 」





 好きな人をもう、みすみす放っておいたりはしない。そっと空を見上げると憎々しいほど晴れ渡った暁の空が僕らを見下ろしていた。









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