《 幸福理論の真理 》







『 ハク、もうすぐで此処に援軍が駆け付ける。駆け付けたら最後、君達の身は保証できない。 』





だから、私を置いて逃げてほしい。と続けられた言葉を聞いたハク、そしてヨナは目を見開いた。なんで、と疑問を投げ掛けるヨナをハクは手で制し、奥歯を噛み締めては無言で頷いた。





『 …ありがとう、ハク。君が私の理解者であったこと、嬉しく思うよ。 』



「 もし、次に会えたときは…俺から話がある。そんときは、なにも言わずに聞いててくれよな。 」





ナマエは何も言わずに頷き、微笑みを浮かべた。ハクは大刀を握り締め、ヨナを肩に担いではジェハを呼ぶ。ジェハは状況を察したのかクナイをしまいこみ、去り際にセンを睨み付けた。





『 皆、ありがとう。 』



「 嫌!嫌よ、ハク、下ろして!じゃないとナマエがッ! 」





肩に担がれ、泣き叫びながら此方に手を伸ばすヨナをナマエは黙ったまま、見つめていた。生温い風が頬を撫で、そして暁の髪を揺らすのを感じながら両目を伏せた。伏せた目蓋の裏には鮮明に、鮮やかに記憶と言う走馬灯が駆け巡る。





『 君達といれて、私は、 』





――とっても、幸せだった。





「 い、いやぁああああああああッ! 」





微笑みを最後に、背後から心臓をセンに貫かれたナマエを見て泣き叫んだ。必死に伸ばした手は届くことは叶わなく、ただただヨナは遠ざかる崩れ落ちたナマエの姿を見ていることしか出来なかった。





「 っ、ナマエ…、 」



「 …昔と、変わらないな。 」





百目鬼は昔のことを思いだし、切なそうに表情を歪めた。小さい頃の自分と、その隣にいる暁の髪を揺らして笑っている少女。小さな手と手を握り締め、微笑んでいる記憶。





" 『 君が迷路の中迷ったら私が手をさしのべてあげる。…だから、私が迷路の中迷ったら手をさしのべてね。 』 "



「 ( 俺はまた、お前に手をさしのべられなかったんだな。 ) 」





だが、差し伸べる前にきっとこの二人が手を差し伸べるのだろう。と心の中で呟き、表情を歪めているハクとジェハを見つめた。肩に担がれているヨナは俯いたまま涙を流したまま動かない。





「 必ず、助け出す。 」





――そっと、夕陽が沈んでいく空に向けて呟いた。









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