《 絶縁の詩 》






「 …姫さん、俺の傍から離れないでくださいね。 」



「 …えぇ。 」





ヨナ達を兵士が囲み、ハクは険しい顔つきになり、ナマエを抱いたままでは戦闘は厳しいと判断し、ヨナにナマエを預けた。ヨナはそっと腕を肩に担いでは回りを睨み付ける。





「 うぁああああああ!! 」





ハクは大刀を握り締め、鋭く鋭利な眼光を宿した瞳で兵士達を威圧した。そして一瞬怯んだ兵士の一人が雄叫びを上げ、剣を一心不乱に振り回しながらハクへと接近した。





「 っ、威勢がいいじゃねぇか。 」



「 雷獣、後ろ! 」





ヨナ達のそばにいたユンが声をかけた。ハクは咄嗟に振り替えって大刀を一振りするが足を狙っていたらしく、兵士はしゃがんだ瞬間に剣をくるり、と回して刀身を下に向け降り下ろす。ブシュッと血が溢れ、ハクは苦悶の声音を漏らす。





「 ハク!! 」



「 っ…姫さん、しゃがんでてください! 」





思ったより過酷だ、と舌打ちするが現状は変わらないと大刀を降り下ろす。シンア達も量に苦戦を強いており、所々掠り傷を作っていた。足に刺さっていたままの剣を抜き、ヨナの背後から迫っていた兵士の首に向けて投げつけた。





「 ヨナ、危ない! 」



「 あっ…、! 」





弓から放たれた矢が、ヨナに向かっているのに気付いたユンが声を張り上げるが一足遅く、ヨナの目前に迫っていた。刺さってしまう、と死を覚悟したヨナは目を瞑るが痛みはやってこなかった。





『 止まれ。 』





静かな声音が、辺りに響いた。ゆっくりとヨナは目を開いては驚いた表情を浮かべて目の前の現状を疑う。矢が、目の前で制止している。隣を見てみれば目を開けて薄ら笑いを浮かべている、ナマエがいた。





『 言ったじゃんか、信じてたって笑うような幸せな終わりなんてないんだってさ。 』





そっとナマエは立ち上がり、ヨナの前で止まっている矢を掴んではくるくると手で遊び、そして矢をジェハと対峙しているセンへと一直線に投げた。ビュッ、と音を立てて向かってくる矢をセンは紙一重で身を逸らし、避ける。





『 奪わせないよ、穢れた下衆なお前なんかには。 』





紫色だった瞳は憎悪を象徴とした暁の色に染まり、その瞳の先には憎悪と言う矛先を向けている、セン・クムジが佇んでいた。





――暁に、染め上がれ。









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