《 生きない方が難しい 》







ジャラリと重い鎖が擦れ合い、音をたてる。立てていた両膝に両腕を乗せ、乗せた腕に額を乗せ、そっと深い溜息を吐いた。重たい鎖の先には灰色の球体、虚石が繋がれている。





目蓋を閉じれば憎い相手の顔が浮かんでくる。憎すぎて腸が煮え繰り返そうになる顔の人物は、セン・クムジだ。ヤン・クムジの弟君であり、奴隷商人として名が知れているらしい。





虚石で身体の自由が聞かないことを良いことに、私を抱き締め、髪を遊んだりと反応を楽しむセン・クムジが憎くて堪らない。身体をまさぐる穢れた大きな手がとても嫌いだ。いつか、男が穢れた下劣な存在にしか見えなくなるかもしれないくらいに。





「 声龍、気分は如何ですか? 」



『 お陰様で萎びそうだよ、早く解放してくれないかな。 』



「 それは無理ですね。……貴女は私の玩具ですから。」





扉が開き、入ってきた男は殺したいほど憎い、セン・クムジ。下劣な穢れた笑みを浮かべ、此方に近寄ってくるのを阻止したいところだが生憎、虚石が近くにあるために言霊なんて扱えやしない。無理に扱うと暴走する可能性も高いのだ。





「 さて、今日は会わせたい人がいるんだ。 」



『 会わせたい人……? 』



「 入ってきてください。 」





愉しげに笑みを浮かべているセンを見てから顔をしかめ、首を傾げるナマエは掛け声と共に入ってきた人物を見て目を見開いた。光を反射して綺麗に映える金色の髪に、綺麗な顔立ちの男もまた、目を見開いた。





「 ナマエ……っ?!どうしてここに…! 」



『 ス、ウォン…ッ、 』





双方の真ん中にいるセンは笑みを深めた。二人の残酷な再会に愉しさを味わっているのだ。スウォンはナマエを見てから下へと目線を移動させ、足首に付いている足枷を辿り、虚石を見つめた。





酷く重々しい虚石を見つめ、ナマエに近付いて手を伸ばしてナマエの白磁の肌を撫で、センを睨み付けるように顔を上げた。普段見せないスウォンの鋭い目付きを見てナマエは目を見開く。





「 彼女を解放しなさい。 」



「 それはできませんね。…彼女は素晴らしい作品…嫌、淫らな極上な女になるでしょう。 」



「 なっ…彼女を何だとッ、 」





断固拒否するセンに掴み掛かろうとするがそれをナマエは阻止するようにスウォンの右袖を掴み、スウォンは驚き、振り向くとナマエは首を横に降り、やめてと告げた。今彼が事を起こしてしまえば彼に被害が及びかねないと、ナマエは考えたのだ。





『 スウォンは、口を挟まなくていいの。…君は、私の大事な人でも何でもないんだから。』



「 わ、私は貴女を――ッ、 」





人生で三度目の最低な嘘をついた。それは、また関係が戻らないくらいの大嘘。ナマエの言葉に唇を噛み締める。どうしてそんなことを言う、何故自分を突き放すのかと、スウォンはナマエへと秘めた感情を押し殺し、薄暗い地下室から出ていった。





これでいい、そう、これでいいのだ。彼を捲き込まないようにするためには彼を最低な言葉で、偽りの言葉で突き放すのが一番だ、とナマエは哀しげに目を伏せ、きゅ、と膝の上で拳を作った。





『 これで満足? 』



「 はい……偉いですね、ナマエは…流石私の愛しい玩具…。 」





髪を撫で始めるセンを見ずに俯き、そっと双眼を閉じれば片方の閉じられた瞳から赤い、哀しみと憎しみが混ざりあった血の涙を流した。









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