《 造花の嘲笑 》







「 …ヨナ姫様、あれを見てください。 」



「 兵士…? 」





ヨナ達はナマエを救出するために数日かけて作戦を練っていた。イクスに会い、黒龍について聞き、その上で作戦を練る。すると騒がしい足音に気付いたハクが下をみるとある一人を率いた兵団がそこにいた。





「 …! 」



「 どうした、シンア。 」





何かに気付いたシンアはピクリ、と反応した。ハクはそれに気付き、シンアに問い掛け、シンアはある場所を指差す。指し示した場所を見たハク、そしてジェハは目を見開く。





紫色の髪を持つ、見ず知らずの男が女性を抱いている。それも、いとおしそうに暁の髪を撫でている。薄っぺらい笑みを浮かべているその表情は二人にとって下劣の表情にしか見えなかった。





「 おい、止めておけ。 」





すかさず助けにいこうとする二人を背後の茂みからやって来た百目鬼が制止の言葉を掛けた。ジェハとハクは振り向き、百目鬼を見たとたんに目を見開く。





「 黒龍様の側近、百目鬼だ。突然の掛け声、すまないな。 」



「 …あの男のこと、知ってるの? 」





ヨナが話を聞こうと百目鬼に視線を写し、問い掛けた。知らない方が良いのだがなと、考えたあと百目鬼は溜息を吐き、話始めた。これまでの経緯、そしてどんな状況かを。





「 今、声龍を抱いている男はセン・クムジ。お前達が討ったヤン・クムジの弟君でもあり、奴隷商人として名が知れている有名な奴だ。 」



「 クムジ…?!じゃあ、ナマエちゃんは…ッ、 」



「 嫌、奴の性格を考えると…そうだな、さしずめ自分の玩具にすると言ったところか。 」





男、セン・クムジを見下したまま淡々と告げる百目鬼を見てジェハはどうしたら…っ、と辛い表情で呟き、奥歯を噛み締める。百目鬼は溜め息を吐き、考えがある、と告げた。





「 今、救出するのはやめた方がいい。奴等は今自分の屋敷に帰っている途中だ、増援を呼ぶ可能性が高い。」



「 そんなの、俺が何度でも…っ! 」



「 無理だよ、ハク。彼の言う通りだよ、屋敷が近いなら援軍を呼ぶのだって容易い。 」





ジェハは溜息を吐き、そっと思考を巡らせるが打開策が見つからずに仕方がなく百目鬼の考えを聞いてみることにし、百目鬼に問い掛けた。





「 取り敢えず、三日後が妥当…と言ったところか。 」





そっと視線を下げ、抱えられているナマエを見つめていると抱えている本人、セン・クムジが此方の視線に気付いたのか此方を見上げたまま笑みを浮かべていた。睨み付けるとナマエの暁の髪に触れ、いとおしむように口付けをした。




黒い感情が、三人の中に渦巻いた。









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