《 鏡に写る醜い己 》







「 ミン……ヒョク…? 」





百目鬼からミンヒョクの居場所を突き止め、直ぐ様走り、あの女の自室へと足を進める。カツカツ、と自分の足音が響く中、クロエは険悪な表情のまま廊下を進んだ。





中の事情、状況を知らないクロエは扉のドアノブに手をかけて思いっきり引き、扉を開いた。黒龍の名前を呼ぶ途中で目の前にある景色に目を見開き、呆然と立ち尽くした。





ベッドに馬乗りになり、口付けを交わしている最愛の人。その下には両手首をベッドに縫い付けられるように押さえ付けられ、寝間着の前ははだけており、心臓の部位の花の象徴が覗いている。





まさに、情事の最中。双方裸に成っていないところによると始まったばかりだろう。クロエはそれを見て頬を赤く染め、頭が真っ白になる感覚に目眩を覚える。クロエに気付いミンヒョクは唇を離し、振り向く。





「 …クロエ、どうかしたの? 」





クロエはミンヒョクの紅色の双眼を見て目を見開いた。口からは鋭い牙が見え隠れし、口の端には小さく赤い血液が付着している。それが血液だとわかるのは当たり前のことだった。





「 ミンヒョク、を、探しに…っ、 」



「 ああ、そう…悪いけれど、またあとで。 」





まるで今は情事の余韻に浸っていたいと言っているように言うミンヒョクを見てクロエの心に罅が入る。私はずっと、貴方のことを想い続けてきた、添い遂げたいと、貴方の隣にずっと寄り添いたいと。





クロエは唇を噛み締めてミンヒョクの下にいるナマエを睨み付けてから部屋を走って出ていく。ミンヒョクは快楽に耐えきれず気絶してしまったナマエの首筋に吸い付き、唇を離した。





「 っ、どうにかしてミンヒョクとあの女を引き離さなきゃ…っ! 」



「 おや、クロエ様。 」



「 セン…っ?! 」





廊下を走るクロエは曲がり角で男とぶつかった。思わず尻餅を付きそうになるが男は腰を支えてそれを阻止した。紫色の綺麗な瞳をみてから何者かがわかったクロエ。





クロエは近くにあった部屋に男を連れ込み、先程のことを手短に話始めた。うんうん、と頷き、そっと閉じられている切れ長の目を開き、怪しげな表情を浮かべて淡々と告げる。





「 黒龍様と声龍様を引き離したいのですね。…お任せください、必ずや貴女の思い通りにして差し上げましょう。 」





――この、クムジ家の名にかけて。




細められた紫色の双眼はハッキリと狂気で歪んだクロエの表情を捉えていた。面白いことになりそうだ、と口許を歪めた。










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