《 僕を裏切るカルマ 》







「 クロエ様、如何なさいました? 」



「 百目鬼、ミンヒョクが何処にいるか知らない…? 」



「 黒龍様なら声龍様の自室へ。 」





夕方、部屋にやって来た黒龍様の幼馴染みである、クロエ様に黒龍様の居場所を聞かれた。息が少し上がっているのを見逃さずにハッキリと簡潔に居場所を教えた。本当は知らないと嘘をつこうかと思ったが黒龍様の幼馴染みである以上、粗末に扱ってはいけない。





「 っ……ありがとう、」



「 廊下を走ると転びかねません、お気をつけ下さい。 」




走り去ろうと背中を向けた女にそう告げると微笑んでありがとうと告げる女。それにしてもそんなに黒龍様と声龍が婚姻を結んだことが嫌なのだろうか。先程告げた時に微かに表情が歪んだのを思い出す。





「 …黒龍様は、どちらが大切なのだろうか。 」





かれこれ一年くらいは黒龍様の傍らで面倒を見てきたがどうもあの女がくると屋敷にいる女官達は毎日のように相談にくる。内容は全てあの女についてのことで、いつものように黒龍様宛の書類を渡しに行こうと近寄ると睨み付けられるらしい。





「 うわぁあああああん!百目鬼さぁあああああんッ! 」



「 五月蝿いぞ、キザキ。 」



「 あの糞女、ぶつかったのに謝らないんスよ?!」



「 そんな愚痴を口にする前に私語を慎めといつも言っているだろう馬鹿者。 」





思い切り扉を開け放ち、泣きながらしがみついてきたキザキの頭を手にしていた分厚い本の角で叩き、溜息を吐く。キザキは俺の部下でもあり、小さい頃に養子として家に来た義理の弟だ。





「 …おい、キザキ。 」



「 んー、なんですか百目鬼さん。 」



「 あの女を監視しておけ、そして他言無用だ、いいな。 」



「 はいはい、わかりましたよ。 」





黒龍様には悪いが女を監視することにし、もちろんバレたら毒を注がれて一貫の終わりだろう。窓の外を見つめたまま動かない俺にキザキは溜息を吐き、呆れ気味になりながらもぽそぽそと喋り始める。





「 百目鬼さん、なんでもかんでも抱え込みすぎですよ。…じゃあ、行ってきます。 」





去り際に見せた寂しそうな表情なんて、見たくはなかった。









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