《 人間的感傷 》







書物が沢山ある部屋で、一人読書をしていた。





『 …ッ、 』





本を捲っているとチクリ、と小さな痛みが人差し指に走る。顔を小さく顰めて右手の人差し指を見つめ、そっと血を親指で拭う。傷口を見てみるといつもみたいに癒えておらず、そのままパックリと開いていた。





『 ( …ここに来てから身体が重く感じる。 ) 』





此処に来てから四日目。此処の屋敷に入ってから身体が重く感じるようになり、小さな傷でさえ癒えるのに数日掛かるようになってしまった。そう、まるで人間の身体のように、虚弱な身体に。





きっと、それは動きを抑えようとするためだろう。そっと胸にある花の象徴に服の上から触れ、双眼を伏せた。本をベッドの上に放り投げて窓の淵に手をかけて暁の空を見上げると少し、感傷的な気分になってしまうのは、の時ヨナに酷いことを言ったからだろう。





『 ( 今更、後悔するなんて本当に馬鹿みたいだね。 ) 』





テーブルに積み上げられている紙を一枚取り、サラサラとペンを真っ白な紙面に滑らせて文字を書き込み、内側が見えないように折り込む。小さな紙飛行機を作ると先程出来た傷に親指の爪を宛てがい、そっと傷口を広げて血を出した。





飛行機の翼に人差し指の血をつけて窓際へと近寄って紙飛行機を暁の空へと飛ばした。綺麗な暁の空に、ポツリと言葉を漏らした。





『 さよならを、告げよう。 』





――僕達の願いが叶えば、誰かが損をするこの理不尽な世界に。





『 あの日に、戻りたい。 』





そっと、紙に書いた願いを呟いた。









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