《 最悪な夢の残骸 》







『 ハクア、待てはできるよね? 』





その一言によって擦り寄っていたハクアは寂しげな表情を浮かべてそっと離れた。倒れて微塵も動かないハクを見つめてから踵を返して歩き出す。引き止める声が聞こえたが無視をして黒龍が消えた街の奥へと足を進めた。





『 やっぱり、憎めないや。片割れを憎めるわけないじゃんかぁ…ッ、 』




――本当は、大好きなんだ。





森林に入り、そっと大きな大樹に背中を預けてズルズルと座り込むと次々と溢れ出す、透明な汚れのない涙。呟かれた声音は優しく、悲しい声音だった。ナマエの号泣する声が森林に響き、ヨナ達のところにいるハクアはそっと両目を閉じた。





「 あんなナマエちゃん、初めて見たよ…。ユンくん、ハクとヨナちゃんの具合はどう? 」



「 気絶してるだけだよ。…シンア、どうかしたの? 」



「 …声龍、きっと嘘付いてる…。声龍、背を向けた時に少し見えた表情が、とても悲しそうに見えた…。 」



「 シンア…。 」





シンアは、見えていた。背を向けた時のナマエの表情も、ハクアが擦り寄った時の表情も。それはシンアにしか分からないことなのだろうと、ジェハは思った。すると、ハクアがふとこちらへ視線を向けて走りだした。





「 ユンくん、ちょっと二人をお願いね。 」



「 …? 」





そう言うとジェハはハクアを追いかけ、その場からいなくなるとユンはシンアに視線を投げかけ、シンアはこくり、と頷くとジェハを追いかけた。そっとヨナの頭を撫でるユンの表情は、慈愛に満ちていた。





「 …!ナマエちゃんのローブ…? 」





たどり着いた先は、町先の森林だった。道の途中にローブが脱ぎ捨ててあり、腹部の部分だけが赤く染まっていた。それは、腹部を鋭利なもので刺されたことを意味していた。ハクアはまた森の奥へと視線を投げかけると走り出す。ジェハも釣られてハクアを追いかけるとシンアも追いかけた。





「 嗚呼、ちゃんと一人で来たんだ。 」



『 まぁね、態々くっさい演技をしてね。…半分嘘で半分本当だけれど。 』





ジェハは咄嗟に木の裏へと身を忍ばせた。見つめる先には呆れた口調で話すナマエと純黒の汚れのない髪を揺らしてナマエに向き直る。対峙するミンヒョクの後ろには百目鬼が控えており、そしてナマエの後ろには木の裏に隠れているジェハとシンア、そしてハクアがいた。





「 俺が言いたいことは分かるよね?君はもう立派な女性なんだ、 」





――俺の手中に堕ちなよ、声龍。





差し出された真っ白い手を、そっと掴んだ。









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