《 神域を荒らした者 》







『 ッくそ、血が足りない…ッ、 』





町から出て森を駆け抜けながら後ろを見ると自分の血液が転々と垂れており、このままでは血痕を辿られて御終いだ。だが、傷が治らない以上、もうこのまま捕まって黒龍とやらの餌食になってしまう。





「 見つけたぞ、声龍。 」



『 あーあ、ッ…見つかっちゃったな。 』





余裕そうな振りをしながら振り向き、一歩後ろに下がり、百目鬼はそのまま嘲笑う。ナマエは眉根を寄せて両袖に手を忍ばせてクナイを指と指の間で挟み、構えた。それを見つめたまま百目鬼は動かず、口を開いた。





「 …何故、此処に来たのだ? 」



『 此処には、私にとって忌まわしい物が沢山ある。それを全て抹消するためさ。 』



「 あの死体を見てもか? 」





するとナマエの脳内に鮮明に思い出される、あの血の海の中心に乱雑に積み上げられていた死体の数々。ナマエはあの死体は誰に殺されたのかとわかれば、そういうことか、と嘲笑った。





『 そう、君が声龍の神域を荒らしたんだ。 』



「 今更何を。…おや、客人が来たようだ。 」





すると聞こえてくるあの聞きなれた声。ナマエは顔を俯かせ、百目鬼は嘲笑ったままクナイを六本近付いてくるヨナ達に向けて投げるとそれは飛んで来た別のクナイによって弾き返され、地面に散乱した。





『 …勝手に、傷付けないでくれるかな。私はそんなに心は広くないんだ。 』





いつの間にかナマエはヨナ達の目の前に立ちはだかっており、両手に三本ずつクナイを指の隙間に挟んで構えていた。そっと見開かれた双眼は、ナマエの暁の髪と同じ暁の色に染まっていた。怪我を負っていることに気付いたハクとジェハは近寄ろうと歩むがナマエは危害を加えないように二人の足元にクナイを投げて突き刺し、告げる。





『 それ以上近づかないで、それ以上近づいたら、君達を喰らってしまうかもしれない。 』



「 ナマエちゃん…でも、 」



「 ジェハ! 」





少し振り返り、喋るとハクはそれでも助けに行こうとするジェハを引き止め、大人しくナマエを見つめた。ナマエが喋る度に尖った八重歯が見え隠れし、何より獲物を求める姿をしているからだ。再びクナイを取り出すと構え、大きく跳躍して空中から百目鬼に向けて投げた。





「 ッ、くッ、! 」



『 言ったでしょ、神域を荒らした罪は重いんだって。 』





クナイを指先でくるくると器用に弄んでいると百目鬼は苦々しい表情を浮かべて肩に刺さったクナイを引き抜き、ナマエに向けて一直線に投げた。それを意図も簡単に弾き、弾かれたクナイは地面へと突き刺さった。





「 つーかまーえた。 」









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