《 君が隠してる世界 》







『 ん…ぁ…、 』





ゆらゆらと揺れる感覚に意識が引き戻され、そっと双眼を開くとゆらゆらと揺れ、太陽の光を反射してキラキラと輝く海が視界いっぱいに広がった。とても静かで、和やかな時間だなと思いながら床に手をついて上半身を起き上がらせた。





だが、突然襲ってきた眩暈と頭痛に眉をひそめて床についていた手がガクリと力を失い、倒れ込んでしまう。床に背中がぶつかると思いきや暖かい何かに支えられ、視界には小さい頃とは違う、大人びたあの子の顔が広がった。





「 …無理、しない方がいいんじゃねぇの。 」



『 ハク…?何でここに居るの? 』



「 アンタと話がしたかった。 」





支えてくれていたのはハクだった。隣にいたのに気付かなかったのに驚くも、そっと壁に寄りかからせてくれたハクを見て自然と微笑みが表情に現れてしまう。あのハクがこんな大きな手をしていることがまだ信じられない。





「 …アンタ、一体何者なんだ?俺はあの時以来、アンタを見たことがない。なのに、何で今頃……、 」



『 あの時、話したよね。…声龍の話を、あの場所で。 』



「 アンタは、声龍なのか? 」





最後の一言がナマエにとって答えにくい質問だった。そうだよ、と答えたらハクはどんな表情をするのだろう。化物扱いをするだろうか、ヨナに近づくなと、その口で告げるのだろうか。それだけを考えただけでナマエの両手は小さく震え始めた。





自分が放った最後の質問から俯いたまま何も喋ろうとしないナマエを見てハクはある一点に気付いた。小さく震えているナマエの両手はまるで孤独に怯える子供のように見えてハクは居た堪れない気持ちになる。





本当は、わかってたんだ。俺が小さい頃会った日に封印されたことくらい。身体は成長しても、心は育たないまま未完成で、触れたら壊れそうなことも。だから、今俺が触れようとしても、怖くて触れられない。アンタが声龍ってことも、本当は信じたくない。





ハクはそっと双眼を閉じて震えているナマエの右手を掴み、自分の方へと引き寄せてナマエの心臓の部位に大きな手のひらを触れさせ、歯を食いしばったあとに告げた。





「 ここに、あんだろ。…声龍の証である、花の象徴が。 」



『 …ハク、 』





ナマエはハクの告げた言葉を聞き、途端に泣きそうな表情を浮かべた。こんな自分を受け入れてくれるのか、と心に一筋の希望が芽生えた。きゅ、と下唇を噛み締めてから自分から離れると泣きそうな表情のまま、微笑みを浮かべた。





『 …自分の為だけに生きるのは寂しいね。 』





ハクは目を見開いた。初めて見たナマエの微笑みはとても儚げで、今にも壊れそうだった。俯いて歯をギリッ、と噛み締めるも何故だか自然と口元に笑みが浮かべられ、ハクはナマエの肩に額を乗せて少し嬉しそうな声音で呟く。





「 …いつか、アンタの隠してる世界、見せてくれよな。 」





儚げに呟かれた願いはナマエの耳に届き、ナマエはハクの頭を優しく撫でて微笑みを浮かべてうん、と頷いた。それが世界を欺く答えだとしても、いつかは君に見せてあげるねと、切なげに思った。









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