《 汚い心 》







あれから船に全員移動させる為にと扉を開けた商人に外へと連れ出され、暗い海岸沿いの道を急いで船まで歩かされ、入れられた。綺麗に列に並ぶように言われ、綺麗に並んでから座らされる。





『 ( ロープが硬い…結びもキツいし何より手の感覚がなくなってきてる。 ) 』





一晩地下の狭い空間に入れられ、そしてキツく縄で手首を縛られたこともあってか次第に手の感覚が段々と鈍ってきてしまっている。動かず度に痛みが走り、指先が雪に触れたように冷たく感じる。





「 …アオ。 」





何かの名前が聞こえたあと、ガリガリと何かを齧る音が聞こえて目を丸くさせた。そっと視線を向けると縄が解かれていて、手元には小さなリスが縄を齧っていた。此方の視線に気付くとリスは鳴き声を上げ、此方に向かってくる。





するとガリガリ、と縄を齧って切ってくれ、締めつけに解放された手は次第に感覚を取り戻していき、徐々に暖かさが戻ってきた。自分のだけが何故かキツく締められていたようで、青く変色していた。此方をつぶらな瞳で見上げてくるリスを一撫でしてから立ち上がった。





「 貴方も協力してくれるの? 」



『 そのリスの恩返しだよ、別に君達の為にやる訳じゃないからね。 』



「 うん、ありがとう。 」





背を向けたまま喋るナマエにヨナは微笑みを向けた。勿論、ヨナから微笑みを向けられている事等背を向けている為に分かるはずもなく、そっと心臓の部分の服に左手を添えた。ぎゅう、と服を握り締め、小さく唇を噛み締めると唇に八重歯が食い込んだのかポタリ、と血が顎を伝って垂れた。





「 よし、上に行こう。 」





大きな物音を態と立て、下にまんまと降りてきた監視役の男を麻酔針を射ち、続いてヨナが打撃を与えて眠らせたのを見届け、階段を上がる前にユリが一緒に行きたいと言うのを二人は潔く受けた。





ヨナ達に続いて階段を上っていくユリを見つめてからナマエも階段へと足を運ばせた。一段一段と上がる度に気が重くなっていくのを漢字ながらナマエは気のせいだと脳内に言い聞かせ、前を見つめた。









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