《 一縷の望み 》







『 …ユリ、眠いなら寝たほうがいい。 』



「 別に、大丈夫よ。 」



『 寄りかかっていいから寝ていいよ。 』





あれから何時間が経過しただろうか。この狭い空間に閉じ込められてから時間の感覚が段々と鈍ってきた。お腹も少し空いてきたし、寒気も感じてくる。ふとユリの方を見てみると眠そうに頭が揺れていて、声をかけるとハッ、と我に返って此方を見つめてくる。





寝ていいよ、と言うもユリは頑なに否定して寝ようとはしなかった。いいから、と溜息を吐きながら言うとやはり眠さがピークに達したのか渋々と此方の肩に頭を預けて双眼をゆっくりと瞑り、数秒後には寝息も聞こえてきた。





寝るのが早いな…と思いながら扉の方へと視線を向ける。扉の外に気配は無く、来る様子もない。初めての状況に感覚が鈍っているのか恐怖心が湧き上がってきて、自然と私の両手は小さく震えてしまう。嗚呼、みっともない。





お人好しなヨナの事だからこの町に着いたら此処を嗅ぎ付けて此処にいてしまうだろうか。どうか、来ないで欲しい。妹には危険な目にあって欲しくない。どうか、どうかと只管心の中で祈り続けた。一縷の望みが、妹の心に届くように。










「 見て、ヤン・クムジだ。 」



「 あれが…。 」





あれからヨナ達は緑龍であるジェハと出会い、ギガン船長と共にヤン・クムジを打つ事に参戦することとなった。ヨナとジェハは偵察に向かい、そして偶然にヤン・クムジを見つけ、屋根の上で見ていた。





クムジが去ったあとにジェハが影で隠れている町人を見つけ、下に降りては近付き、何事かと聞き出す。話を聞いている最中にジェハはその町人が女性だと見事解り、告げてみせた。それから別れてギガン船長の元に戻ったジェハとヨナ。





「 根城は突き止めたか…間違いないんだね? 」



「 嗚呼、勿論だよ。 」



「 奴等の船を襲うとしたら…決行は明日だ! 」





その日と声と共に、海賊たちの雄々しい雄叫びが辺りに響いた。









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