《 生命に背く 》







『 酷い…、 』





あれから暫く歩き続けて漸くたどり着いた場所が此処の町だった。ナマエが目の当たりにした光景は見ていられぬ光景だった。それはナマエだけではなく、他人にも見ていられぬ光景。





ナマエは目の前に倒れている子供に何もしてあげられなかった。苦しく呻いている、子供の姿に目を背けずにはいられ無かった。死んだことにも気付かずに子供の肌を舐め続けているハクアに腕を伸ばして肩に乗せ、背を向けて心の中で冥福を祈りながらその場を後にした。





『 宿泊する場所は此処にしようか。 』





一通り町を見終わり、日も暮れた頃となり、眠たそうに方で丸まっているハクアを苦笑しながら撫でてあげると返事の代わりにモゾモゾと動いてから眠りにつく。それを見届けてから古く軋んだ扉を開き、あのー、と控えめに声をかけた。





「 どうかなさいましたか? 」



『 今日、ここに泊まらせてもらっても宜しいでしょうか? 』



「 嗚呼、どうぞ!今部屋を案内しますね。 」





出てきたのはほんわかと優しそうな青年だった。暫し此方を見つめ、呆然としていたものの直ぐに自我に返ったのか慌て、部屋を案内しますと告げた青年。自然な反応に思わずクスクス、と笑ってしまい口元を抑えた。





「 …俺、此処の一人息子のアスマって言います。失礼ながら名前を聞いても…? 」



『 堅苦しいから敬語は使わなくていいよ。…私はナマエって言うの、宜しくねアスマ。 』



「 う、うん、宜しく、ナマエ。 」





部屋に着くまでの間、他愛無い話をしながら部屋を目指した。ぎこちなく笑うアスマの表情はなんだか照れているのか慌てているのかがわからなくて少々戸惑ったけれど、何故だか隣にいるだけで暖かい気持ちになっていくのを感じた。





『 ありがとう、アスマ。 』



「 ううん、明日の朝に起こしに行くね。朝食があるからさ。 」



『 解った。…おやすみ、アスマ。 』



「 おやすみなさい、ナマエ。 」





軽く手を振り、別れを交わしあった後に静かに扉を閉め、ハクアをそっとベッドに置き、自分も続けてベッドに身を投げた。何故か、とても心が暖かい気がする。人の心に触れてみるって、こんな感じなのかな。





『 …暖かいね、人の気持ちは。 』





きゅ、とシーツを掴み、自然と目蓋が下がっていき、私はいつの間にか寝てしまった。









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