《 浅き夢見し 》







ヨナ達と会ってから少しの時間が経過し、今は星空がよく見える時間帯、夜となった。先程までどんよりと曇っていた空は晴れ、月は綺麗な三日月型に。今日は何処で過ごそうかと悩んでいるナマエは小さな湖で水で身体を清めていた。





『 あぁもう、お前はあっちにいきなってば…裸なんて見られたくないんだからね。 』





身体を清めている最中に旅の途中で着いて来たホッキョクギツネが水の中を犬かきで泳ぎ、近づいてくるのを見たナマエは溜息を吐いてしっし、と陸へと上がらせた。濡れた前髪をそっとかき上げ、三日月を見上げる。





月光に照らされたその身体は青白く、胸にはロベリアを象った花の象徴が彩られていた。不意に足音が聞こえ、そちらへ視線を投げかけると先程の狐がタオルを口に加えて大人しく待っている。





『 …はぁ…解った、今出るよ。 』





バシャバシャ、と陸に上がっていき、タオルを狐の口から受け取ればそれと同時に器用に腕を伝い、肩に素早く乗り濡れている首筋に顔を埋める狐。擽ったそうに身を捩りながら身体を拭き終わり、服を身に纏った。





『 …もしよかったら、私と一緒に来る? 』





木の下に腰を深くかけ、指先で狐の頭を撫でてあげると言葉に機敏に反応し、グリグリと首筋に頭を押し付けてくるこの狐。嬉しいのかな、そう思うとこちらまで嬉しくなってくるのを感じ取り、白い狐の身体を見て一つの名前が思い浮かんだ。





『 君の名前はハクア、でどうかな?真っ白で綺麗な身体をしているし…何より、この名前が何だか懐かしくて…。 』





上げた顔が若干、嬉しそうに綻んでいたのは気のせいだろうか。立ち上がり、腰についた砂を払い、月光に照らされた道を歩き始めた。胸に刻まれた花の象徴を服の上から触れ、呟いた。





『 …最低だね、私は。 』





そう呟くと狐はその言葉を否定するかのように頬をペロペロと舐めた。その仕草がナマエにとって励ましのように取られ、ナマエの気持ちはどんよりとした気持ちから明るい気持ちへと変わっていく。元気を出した名前は微笑みを浮かべて狐に頬を寄せた。





暫く歩いていると丁度良い大きな樹木を見つけ、大きく跳躍をしては木の枝へと両足を乗せ、枝を触って見る。ザラザラとしているが木の枝は刺さらずに滑らかな感触がし、そっと身を横たえる。ローブを上から被せるともぞもぞとお腹の部分が動き、徐々に顔の方へと移動をしてくる。





もぞり、と止まっては狐が顔を出し、自分以外の暖かい体温を感じ取ったナマエはそっと白い毛に顔を埋め、やがては静かな寝息を立てて眠りについた。ハクアはそれを見てから眠りにつく。





青白い月光が、ナマエ達を照らしていた。










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