残された時はもう僅かな物であること



『今日も暑いね、みどうくん。』

「せやな、日焼け止めは塗ったん?」

『うん、塗ったよ。…あ、蝶々!』



 今日はテスト期間だからと部活ない為にみどうくんがお見舞いに来てくれて、病院の敷地内の庭に連れ出してくれていた。可愛い花に色々と目移りする私に御堂くんは呆れていたけれど、あまり外に出られなかったからはしゃぎたくなるのもしょうがない。



「あれ、モンシロチョウとモンキチョウっていうんやよ。」

『そうなの?みどうくんは物知り博士だね!』

「これ、常識の範囲やけどなぁ。」



 モンシロチョウとモンキチョウ、交互に指差しながら丁寧に教えてくれるみどうくんに微笑むとみどうくんは照れくさくなったのかそっぽを向いて常識の範囲だという。



『…ねぇ、みどうくん。』

「なんや、具合でも悪うなったんか?」

『ううん、こうしてみどうくんと出かけられるのって嬉しいなって。』

「さよか。」



 一度夢見たことがあった。手を繋いでお花畑を歩く夢。違う形だけれどこうして外を出歩くのが現実になるなんてとっても嬉しかった。こんな時間が続けばいいのになぁ、なんて思っても一日一日は刻一刻残酷と私を引っ張っていくわけで。



 こんな病状が悪化していく中、外に出れて嬉しいよ。そう言う私にみどうくんは「…いつでも、外に連れ出したるよ。」なんて嬉しい言葉を言ってくれた。私はやっぱり、好きなんだなぁ、みどうくんのこと。なんて思ったり。



『ねぇねぇ、みどうくん。』

「なんや、どうかしたん?」

『大好きだよ、あきらくん。』

「なっ、」



 えへへ、と照れくさそうにして笑う私にみどうくんが頬を赤くして口元を片手で覆ってそっぽを向いてしまった。その表情を見て一瞬ときめいたなんて死んでも言えないけれどね。本当に大好きだよ、あきらくん。



 ( 残 さ れ た 時 は も う 僅 か な 物 で あ る こ と )




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