あとどれだけ続くのだろう?




「単刀直入に申し上げますと…名前さんの余命はあと、二週間弱といったところです。」

「そんなっ、」



 ______今日はいつもと違った。検温の前に、お父さんとお母さんが病院に来て、笑顔で話をかけてくれていた。今まで、は。でも、今は違う。二人共涙を目に浮かべていてハンカチをお母さんは膝の上で握りしめていた。



 お父さんはというと、そんなお母さんを宥めるかのように背中を大きな手のひらで撫でてあげていた。目の前の医者から告げられたあと二週間弱の命と言う言葉に、心臓を抉り取られるような痛みを感じたのは、気のせいじゃない、今を生きている証拠、だ。



「なんとかならないんですか、先生っ…!」

「恐れ入りますが、私の力ではなにも…。」



 あと、二週間しかない私の命。まだ、友達一人しか作ってないよ、高校に行きたいよ、沢山友達作って、放課後に沢山遊んでみたいよ。普通の女子高校生みたいに、遊んでみたいよ…っ!



 そんな感情と言葉が渦巻く中、涙は一粒も頬を流れ落ちなかった。とっても悲しいのに、苦しいのに、辛いのに、涙は頬を流れてくれない。体が、感情についていけない。只管黙り込む私にお母さんとお父さんは憐れむような、悲しむような声音で話を掛けた。



「名前、ごめんね、ごめんねぇっ…!母さん、貴方になにもしてあげられなくてっ…!」

『…先生、せめて…二週間、自由に過ごしていいですか?』

「…ああ…本当に申し訳ない…。」



 謝るお母さんとお父さん、医者を残して一人立ち上がって扉へと向かい、廊下へと出た。するとその途端に聞こえてくるお母さんが号泣する声が聞こえた。そのまま廊下を進んで自分の部屋に戻るとサイドテーブルに小さなカゴバックが置いてあった。



 扉を閉めて、ベッドのそばにあるサイドテーブルに近づくと飾り気のない綺麗に折りたたまれた便箋とカゴバックが置いてあって、便箋を手にとった。便箋を開くと不器用ながらも綺麗に綴られた文字の羅列が姿を現す。



"今日はキミぃがいなかったから帰らせてもらうで。"

"それと、二週間後にロードレースがあるんよ。"

"よかったら、見に来てな。"

"ほな、また明日な。"



 淡々と綴られている文字の羅列に涙が溢れてきて、涙が便箋に落ちて滲んでいった。本当はまだ、生きたいよ。みどうくんの隣に、いたいよ。その場にしゃがみこんで便箋を抱き締めて沢山の涙を流した。



 ロードレース、見に行きたいの。でも、行けるかわからないや、なんて心の中で呟いても喉からは嗚咽しかでなくて、正常に言葉を発してくれない。小さく嗚咽を漏らしながら号泣する私を憐れむように大粒の雨が窓を叩きつけられた。



 いつまでも、貴方の傍にいたいと強く願った。



 ( あ と ど れ だ け 続 く の だ ろ う ? )




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