*幼馴染み彼女設定



「恭ちゃん?」

授業も終わり、帰宅部の私にとっての放課後は、応接室で彼の帰宅を待っているのが日課となっていた。ソファーに座って、お気に入りのあたたかい紅茶を飲むのもまた日課。おおげさにいうと、私の世界の中心は恭ちゃんといっても他言じゃない気がする。両親が夜遅く帰る私は、恭ちゃんの家で寝泊まりすることが多いし、朝食だって一緒に食べる。お弁当は私担当だ。和風が好きな彼に合わせて作るおかげか料理の腕は高いと胸を張って言える。


「少しだけ、」

「うん、お疲れ様」

後ろから伸びてきた腕に一度は驚いたものの、肩に置かれた黒髪の頭に強張った口元がゆるり、と円を描く。こうやって甘えてくる恭ちゃんはめずらしいからなんだかうれしい。頭を撫でると、サラサラの髪質や真っ黒なこの髪が女としてうらやましい。

「恭ちゃん、」

「なに?」

「……、無理しないでよね」

だんまりになった恭ちゃんにやっぱりと、眉を顰める。この頃の恭ちゃんは可笑しい。いつの間にかいなくなるし、携帯だってつながらない。しかも、何処からか小さな赤ちゃん連れてきたときはびっくりしたし、隠し子だと思ったりもした(だって、恭ちゃんそっくりだったから!)。あと、一番気になるのは彼の腕に嵌められたみたことのない腕時計、確かちょっと前まで笹川君もつけてた。はやってるのかな…?

「私に言えないことなら仕方ないけど、無理しないで。それだけ」

恭ちゃんがいなくなったら、私どうなっちゃうんだろう。怪我を増やしてくるその姿に毎回心臓を握りつぶされたかのようか感覚を覚える。彼の血を見ると、涙が止まらない。彼が、好きで、大好きで、愛しすぎるから失うときの恐怖感が計り知れない。

「私に心配かけたくないなら、勝って………!」

怪我なんてしてほしくない、血なんて流してほしくない。本当は恭ちゃんにマフィアの道なんかに進んでほしくない。黒のスーツを着た赤ん坊がこのはなしをしてきたときは本当に驚いた。そのスケールの大きさと、日常とはかけ離れた現実をそう簡単には受け取れなかった。嘘だと信じたかった、けれど、夜の並盛中で見た光景が今も忘れられない。目を瞑れば、その光景が今にも蘇る。でも、それを見守ると私はあの黒スーツの赤ん坊に誓った。 


見えないはずの境界線
(でも、それが私にとってはちょうどいいのかもしれない)







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