少し買い過ぎただろうか。
お気に入りのブランドや、財布に優しくて可愛いお店の紙袋が重い。駅のコインロッカーに預けてから成績発表の会場に行こうと言う話になったのは、ついさっきの話。


「あ、ほら、中継!」


そんな荷物を抱えながら大型ビジョンの前で信号待ちをしていると、お姉ちゃんがヒーローTVを映すそれを指をさした。


――っと、謎の男が犯人を逮捕!!!


今日のナレーターは一段と興奮している。それもその筈だ。見覚えの無い黒いスーツの男がワイルドタイガーを助けて、更には犯人逮捕までやってのけてしまったのだから。


「すごい、誰だろう?」
「新しい人とか?」


話ながら周りを見れば、みんなが立ち止まって画面を見ている。ナレーターの言葉を借りれば、謎の男の登場を、私を含めた全員が驚いているように見えた。
カメラが黒いその人に寄る。上がる歓声に、上げられたスーツのシールド。…そうして見えた、謎の男の素顔。


――これは新しいスターの誕生でしょうか!?


驚かない、訳が無かった。







大好きなブルーローズの歌声も、豪華絢爛を空に映すような花火も、人のざわめきも、全てが遠い。今シーズンのMVPが誰かなんて、スカイハイには悪いけど今はどうでも良かった。


「それでは、アポロンメディアCEO兼OBC社長、アルバート・マーベリックより挨拶をさせて戴きます!」


それくらい、私にとってはさっきの事が衝撃だった。


「と、その前に。皆さんに紹介したい人物が。…入りたまえ」
「…あの人、さっきの、」
「彼はこの度、司法局の正式な認可を受けた…」


いよいよだ。
お姉ちゃんが何か言った気がするけど、心臓がうるさくて敵わない。


「バーナビー・ブルックスjr.」


だって、こんなことってあるのだろうか。


「新しいヒーロー、すごく格好良いと思わない?……なまえ?聞いてる?」
「…ああ、うんっ、聞いてる、聞いてるよ」
「なにぼうっとしてるの。もしかして、見とれてた?」
「もう、変なこと言わないでよ」


お姉ちゃんの言う通り、私は見とれていたのかも知れない。

思い出すのはバーナビーがまだヒーローアカデミーに通っていた時のこと。陰りを含み、けれど真剣な目でヒーローにならないといけないと語った彼は今、どんな気持ちでステージに立っているのか。
どんなに考えても私には想像も付かないその答え。それは解っているし、今の私は冷静に考えられない状況にある。

それでも、彼から目を離すことは出来なかった。



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