仁王と幸村の組み合わせなんて珍しいなあ、なんて、赤也をからかう二人を見ながらぼんやりと思った。
当社比二割増しで頭がぐちゃぐちゃな赤也に、私の隣にいる丸井がぶっと吹き出したところで、今まで抱えていた疑問が音になった。


「本当に私まで良かったの?」
「良いんじゃねえの、どうせ、赤也がお前に我が儘言ったんだろ?」


鍋パーティー、略して鍋パをしよう、そう言い出したのはどこの誰だったか。そんなことは今となってはどうでも良い事なんだけど、男子テニス部に囲まれて女一人と言うのは、立海の女の子をみんな敵に回しているような気持ちになる。

丸井の言う通り、昨日の部活終わりに「せっかくのオフなのになまえ先輩と居られないのは嫌だけど、部長達の提案を蹴る勇気が俺にはねえっす」なんて赤也が早口で不満を言った。
そんな赤也を「私より先輩を優先するなんて」と怒るどころか、可愛いと感じた自分が居る。


「それよりなまえ、お前の彼氏大変なことになってるぞ」
「神の子と詐欺師なんてラスボス過ぎて無理」
「ふはっ、確かに」


プロレスはよく解らないけれど、仁王が赤也に掛けている技はすごく痛そうだ。
その様子を笑いながら見ている神の子が、昨日、「だったらなまえも来たら良いじゃないか」と私と赤也に言った。

今思えば、後半を可愛がる理由として私を呼んだのもあるんだろう。私の彼氏は色んな人から愛され、可愛がられている。まあ、その彼氏は今なんとも言えない叫び声を上げているけど。


「そろそろ辞めてやれ、埃が散る」
「ちょ、柳先輩!それなんのフォローにもなってねえっす」
「確かに赤也より鍋の方が役に立つな」


ぐつぐつと煮える鍋の匂いが嗅覚からお腹を刺激する。鍋を運ぶジャッカルに、そのあとから柳生と真田も部屋に戻って来た。鍋に関して手伝いは一切してないけど、柳と柳生なら大丈夫だろう。真田とジャッカルは未知数なのでノーコメント。

ソファーで傍観していた私もそろそろ輪に入ろうかと思った時、同じように傍観していた丸井が小さな声で私に尋ねた。


「なあ、お前、赤也のどこが好きなの?」
「どうしたの、いきなり」


この小さな声は、私と丸井にしか聞こえて無いだろう。食器を並べる音にも負けてしまいそうだ。唐突な質問に目を丸くすれば、丸井は言葉を続ける。


「なんとなくとか言ったら怒るからな」


ぶっきらぼうな物言いだけど、じんわりと身体の中心から熱を持つような気がした。丸井は丸井で、後輩を大切に思っているのだ。他の皆と同じように。


「上手く言えないけど、」
「おう」
「どこがとかがじゃなくて、赤也だから好きなんだよ」


丸井は一瞬びっくりしたような顔をして、さっきの私より目を丸くする。それから、降参だと言うように笑って、勢いよくソファーを立った。


「しね赤也!リア充爆発しろ!」
「はあ!?」


付き合ってらんねえ、と言いながら、赤也を蹴飛ばしてそれまで赤也が座っていた場所を占領する。さすがにただの八つ当たりで赤也が可哀相に見えたけど、そんな光景すら幸せだと思う。
無実の罪で蹴られた赤也には、あとで丸井に言ったことをちゃんと伝えよう。

ふと、視線を感じて赤也と反対側を向けば幸村と目が合った。どうやら、私と丸井の話を聞いていたらしい。


「赤也のこと、よろしく」


私を見て穏やかに言う幸村に、任されます、と小さく返した。私の席からは赤也を囲むテニス部のメンバーの顔が優しく見えて、お腹は空っぽなのに胸がいっぱいで堪らなかった。


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