きらきらと海が光り出す。

私が宴の途中からずっと見張り台から皆を見下ろしていた事は、顔を覗かせてくれたマルコやイゾウくらいしか知らない。見張り台に上がったのは、なんとなく騒ぐみんなを少し離れたところから見たくなった、それだけ。

年が明けて、エースが一つ年を取った。
みんな楽しそうで、私も新年早々エースの顔面にケーキを投げ付けた。げらげらと湧く笑い声が幸せで、鼻に生クリームを塗られてもちっとも怒る気にはならなかった。

宴も終わり、甲板には残って飲む人と酔い潰れて寝ている人が見える。この時間が一番好きだ。

ふと、マルコとエースが何やら話をしているのが見えた。マルコが見張り台を、私の方を顎で指す。それに納得したようなエースの顔、踵を返す彼。―――ここに宴の主役がやって来る、らしい。


「そこに居たのかよ、なまえ」


とん、と、軽い動作でお酒の匂いと共に上がって来てしまうんだから、悪魔の実なんかなくっても彼はびっくり人間だと思う。


「探してくれたの?」
「すっげえ探した」
「その割には海に落とされたりしてたけど」
「それは、」
「嘘。ありがとう、エース」


いじわるをしたくなって私が唇を尖らしてみても、くしゃりと頭を撫でられた手には勝てそうもない。
二人並んで日の出を待ってるみたい。エースが欠伸をしたから寝ても良いよ言ったけれど、起きてると返された。その声だって眠そうなのに。


「改めて、おめでとう」
「本当に改まったな」
「言われ飽きた?」
「いや、何度言われても飽きねえ」


私達の会話を縫うように、わ、と甲板で声が上がる。もうすぐ初日の出だ。寝てる人を蹴って起こす様子も見られる。
たかだか日の出一つでこんなに騒げるのだから、私たちは幸せの元に生まれて来たんじゃ無いかと思う。


「去年もエースが大好きだったけど、今年も大好きだよ」
「もっと、じゃねえの?」
「うわ、欲張りだ」
「海賊だからな」


からからと笑う声に、そうだねえと笑い返した。そうしたらぐっと腕を引かれて抱きしめられて、エースの肩越しに昇っていく太陽が見えた。海から太陽が顔を出す瞬間、世界が真っ白になる。ふわ、と、風なんか吹いてないのに身体が撫でられるような感覚を、エースも感じているだろうか。
日の出見なくて良いの、そうだなあ、答えになってないよ、そうだなあ、なんて、全く会話が成立しない。


「日の出じゃなくて、」


俺を見て、そう言い切る前に重ねた唇。
宴の余韻を残したままの頭がさらに熱に浮かされるような、だけどどこか冷静にエースを探すような。―――贅沢だ。彼の体温を受け入れながら、そう思った。

今日は歓喜に満ちた海。消えてった星すら名残惜しんで手を振るような朝焼け。
目を開ければきっとエースの後ろにそんな景色が見える。けれど目を開ける気にはならなかった。ただ私は、彼が愛しくて仕方なかった。



世界が貴方を祝福する


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