とくとく、埋めた胸元で優しい音がする。ただそれだけで、じわりとまた涙が滲んで、甘いにおいのする彼の服に落ちた。「ねぇレディ、俺にその涙を分けてよ」「半分にしたら、君の背中も少しは軽くなるだろ?」温かい手が私に魔法を掛ける。「さぁ、顔を上げて」いつだって翼をくれるのは貴方だった。

(120325/神宮寺レン)