「俺のこと意識しやがれ」
は?と返せば彼の形の良い眉が歪められる。屋上でまったりしていたら突然どこからか現れて、突拍子もないあの台詞。一体なんだって言うんだ、小首を傾げて赤の瞳を見つめ返せば、なんでか目をそらされた。
「どうしたの?ギルバートくん」
「ギルバートじゃねぇギルベルトだ」
「うん、で、意識しやがれってどういうこと?」
「は、お前、普通わかるだろ!鈍いんだよてめーは!」
彼がぎゃあぎゃあ騒ぐ度、きらきらとアッシュブロンドが揺れる。綺麗な髪だなぁ、触らせて欲しいなぁ。ぽけっとそんなことを考えていたら、むっすりとした表情のギルがなんだよ、とこれまた不機嫌極まりない声色で言った。
そんなことお構いなしとでも言うように手を伸ばせば彼はぎくりと体を引いた。(可愛い、)ふわふわ、撫でるように髪を触る。意外に柔らかい。なんだか幸せな気分になって頬をゆるませた。
「………、」
しばらくは大人しく撫でさせてくれていた彼だったけれど、不意に痺れを切らしたように腕を掴まれる。そのまま引き寄せられて、胸元にぽすりと押し付けられた。そして、あろうことか彼はわたしがそうしたのと同じ様に、わたしの髪をふわふわと撫で始める。それになぜかどきりと、した。
「お前、俺のこと好きになれ」
僕と恋をしませんか。
(最初と言ってること違うじゃない、)
(うるせぇ!お前がわかんねぇって言ったからわかりやすく言い直してやったんだろ!)
(ギル、かおまっかだ、)
(こ、こっち見んな!!)