ONE PIECE | ナノ


お酒の勢いを大切に(エース)




「今日は飲むぞ、野郎共ー!!」
「「おおーっ!!」」
「…何やってんだ?あいつ」

静かな満月の夜を打ち破るかのように、モビーディック号に響き渡る幾重の叫び声。その光景だけ見てみるといつもと変わりはないのだが、今日はその中に一人、いつもは見ない人物がこの馬鹿騒ぎを掻き立てていた。

「まーたシイナがゴロツキに出くわしたらしいよい。そんでゴロツキと一緒に海軍にも追われたんだと」
「へぇ。楽しそうだな!」
「俺だったらごめんだねい。エースだからんな事言えんだよい」
「そうよ!なんならエースが狙わればいいのに!!」
「ん?」
「聞こえていたのかい」

エースとマルコが振り向けばシイナはジョッキを掲げて叫んでいた。それを見て二人は顔を見合わせた。シイナの顔が真っ赤のは酒が入っているからだろう。元々彼女が酒に強くないのはクルー全員が承知している事なのに、今宵は誰かのお遊びでシイナにそこそこの度数のお酒を飲ませたらしい。
今は呂律が回っているから良いが、シイナの言葉が聞き取れなくなった時が危険のサインだ。

シイナはエースの隣に断りもなくどかっと腰を下ろした。反対側を見ればすでにマルコの姿はない。どうやら世話はエースに託されたようだ。

「シイナどうだ?また懸賞金上がりそうか?」
「はあ!?そんなの冗談じゃないっての!!男は皆、懸賞金の事気にするわよね!」
「あれ、嬉しくねぇのか?」
「…嬉しいけど嬉しくない」
「は?」

エースは意味が分からないと言うように首をきっちり45°傾ける。当然だ、意味が分からないように言ったのだから。だがエースがそんなあやふやな答えで満足する筈もなく、元より酒の力で抵抗力が低下しているのも相まってエースの根気強さに負けたシイナはしぶしぶと口を開いた。
…クソ。口の回りに食べかす付けて首を傾げるのは反則だ。

「海賊としては嬉しい…けど、女としては嬉しくないの!」
「何でだ?」
「何でも何も、私は女捨てた訳じゃない!私だってたまには夢見たりすんだから!」

私より賞金低い奴は嫌よ!?あ、一般人は別枠だけど!
シイナのこの言葉にエースは目を見開いた。シイナは普段、こんな事を言う女じゃないからだ。酒の力が大きいのだろうが、こんな事を言わせる酒はある意味怖い。
すでにシイナの顔は真っ赤で自分の言っている事も良く分かっていないのだろう。エースはそれを分かっていながら白い歯を溢した。更にエースは腕を上げると、そのままシイナの肩に回し、ガシガシと上下に揺れた。

「うえ…気持ち、悪っ」
「にししっ!それならそん時はおれのとこに来りゃ良いじゃねえか!」
「う…って、え?」
「あ、でもおれも嫁出来ねえかもしんねえから、シイナもちゃんと空けとけよな!」

「!!…………(うっぷ)」

上下に揺らされ吐き気を催したシイナは何を言っているんだと言うばかりにエースの方を見る。本気なのか伺ったつもりだったが、エースはただ何時ものように素敵な笑顔を浮かべてこちらを見ているだけ。そこからは本気かどうかは分からなかったが、少なくとも嘘とかジョークが混じっているようには見えなかった。
シイナはその事に思わず顔を破顔させる。

「苦労するぞー?私が妻だとー…」
「そうか?結構楽しそうだけどな」
「!…この、エースの癖にぃ」

エースの言葉が自分の胸を暖かくさせてくれる。シイナはこれも酒の勢いだ、とばかりにコツンと筋肉の付いた逞しい肩に頭をぶつけてやった。エースはそんな私に、笑顔+頭(激しく)撫で撫でというオプションまでつけてくれて、頭を更に上下に揺らしなさってくれた。

…次の瞬間には勿論、未来の旦那様の前でスッキリさせてもらいました。








(うー…頭痛)
(おっ、シイナ!)
(あ、エース!…ねえ、昨日って何か話したっけ?エースと喋ってた事しか覚えてなくて。何か重要な事話してたような)
(…え。マジか)




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