ONE PIECE | ナノ


海賊の定義(スモーカー)




そこを通りかかったのは、本当に偶然だった。

「あ…」

その部屋は通信室で、ここには海賊に関する事から海軍の重要機密まで沢山の情報が年中溢れかえっている。私はそんな所に彼がいるなんて珍しいと思い、何やら彼が熱心に覗き込んでいる物をそっと見て見た。…そして納得する。ここはそう言えば、海賊の常に新しい手配書も置かれているのだ。
私はあまりにも凝視し過ぎて私の存在に気付いていないだろうと思われる彼の頭を軽く背伸びをしてはたいてやった。
やはり彼はいつも通りデカくゴツイ。

「?!…なんだてめぇか」
「私に気づかないでおいてなんだは無いでしょ、スモーカー。そんなにライバルにご執心?」

冗談+茶目っ気たっぷりで「シイナ、嫉妬しちゃうわ」なんて言ってやったらスモーカーは、本当に苦虫を噛み砕いたのでは無いかと思われる位、眉間に皺を寄せた。

「ライバルじゃねぇ、只の標的だ」
「呆れた。あんたがそう言って、ローグタウンを離れた事ある?」
「…ねぇな」
「ほら。つまりそう言う事よ」

私がそう言って笑うと、やはりスモーカーは眉を顰める。今まで手配書の彼をライバルなんて枠に入れてなかったせいか、そう言われるのは違和感があるのだろう。
スモーカーが持っている手配書を興味につられて覗き込んでみれば、そこにあった情報は私が認識していた物とは少し違っていた。ほお、と声を上げれば、彼は何事だとこちらの方を見る。

「彼、また懸賞金上がってんじゃない。これまた…かなり上げたもんね」
「世界政府に喧嘩吹っ掛けたんだ。これじゃあ足りねぇぐれぇだろ」
「うーん、本人達は良い奴らなのに」
「お前の価値観で決めんじゃねぇよ」

海賊はどこまで行っても海賊だ。
スモーカーは自分を体現するかの様な葉巻の煙を吐き出し、そして苦々しく呟いた。
勿論私もその言葉を逃す様な真似もしない。聞き直せばスモーカーの機嫌が一気に急降下する事が分かっているからだ。だけれどシイナは、自分の価値で決めつけているのは結果自分も同じではないのかと、そっと溜息ついた。

「全く…その考えはいつになっても変わらないのね」
「まあな。お前は…昔、あいつらに会った事があるんだったな」
「ええ。だからこそ彼らは違うと思ったわ。そうね…」

私はそこまで言って、喉の寸前まで出ていた言葉を飲み込んで口を紡ぐ。彼の眉間の皺の具合を窺って、話していいものか答えあぐねた。

「何だ」
「…これ言っても機嫌損ねない?」
「安心しろ。もう十分に損ねてる」
「そっか。なら安心ね」

どうやら皮肉を噛ませるくらいの心の余裕は持ち合わせてはいるらしい。シイナはその事に少しだけ息を漏らして口を開いた。

「スモーカーだって一回会ったんだから何と無く分かるでしょ。…あいつらは、純粋無垢な少年少女達なのよ」
「見たまんまじゃねぇか」
「だからそうじゃなくて」

私が言いたいのはそう言う事ではない。つまり…彼らを例えるならば、夢を持った、まだ現実を知らない少年だ。何らかに影響されては秘密基地だのヒーローごっこだので自身の夢を膨らます。イタズラだって本当には悪い事かも、と思いつつ、スリルやら常識からの開放感やらを求めて、例え後で大人に叱られようとも実行に移す。そんな彼らはヒーローとか言った冒険のにおいがする物にはすぐに飛びついてしまう。

「つまり…なんて言うかな。彼らはワンピースを求める。だって皮肉な事に、恐らく今の世で一番の冒険はそれだもの。そしてワンピースを求める事ができる「海賊」って物に偉大さと誇りを持ってる」

まぁ、物は考え様ね。私はクスリと笑いを漏らした。

「いっそもうあいつら清々しいのよね…。あ、でもスモーカーだって野望位持ってるでしょ?ある意味二人の夢は対して変わらない。…ただ、スモーカーは海兵である事で自分の野望を成し遂げようとしてるし、ルフィは海賊である事で自分の夢を追ってるってだけ」
「…つまんねぇ屁理屈だ。そりゃああれか、海賊を肯定するっつーことか」
「あら。別に海賊を正当化する気は無いわ。私だって海兵で、今まで海賊の所業を見てきてるもの。…ただね、彼らはそして本当に純粋に冒険を求めてるみたいだから」
「それを聞いて、安心していいのか悪いのか…」

そんな事を言って、どっかの誰かみたいに海賊になられても困るしな。スモーカーはずっと見ていた手配書から目を離し、誰ともしれない手配書に目を通し始めた。懸賞金が五千ベリーにも満たない様な小物ばかりだ。
スモーカーと言う男は、見た目ごっついわ、無愛想だわで感情の起伏が無いように一瞬見える。が、彼は誰よりも熱く、真っ直ぐでそして単純だと言う事をシイナは知っている。今だって自分の感情の変化を見抜かれない様に手配書に目を通し始めた様なものなんだろう。
そう考えると、海軍内では気難しい人に入っている彼も何だか可愛く見えてきた。

「…心配しなくても、私はスモーカーから離れる気は無いわよ?」

そう言ってやればスモーカーは「うるせぇ。…知ってるさ」と言って私の頭を小突いた。その時に少し耳を染めていた事は私の胸の中だけにしまっておいてあげよう。





*****

何故か乙女なスモーカー…。
ヒロインの言いたいことが頭にあっても文字にはできないもどかしさ。
ほぼ無糖でスンマセン。。。




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