ONE PIECE | ナノ


自分だけに向けられる(ゾロ)


サウザンド・サニー号の片隅。
丁度その時間帯は決まって影が射す所だった。ゾロはまたいつものように鍛錬を終え、綺麗さっぱりと汗を流した後に、そこで一眠りしようと座り込んだ所だった。

その場所は最近昼寝の時にはお気に入りの場所で、そこに流れ込んで来る風も髪を撫でる程度で心地いい。そうやって目を閉じて風に包まれていれば、シイナがゆっくりとこちらに忍び寄る足音も聞こえてきた。

「ゾロ…もう寝ちゃった?」
「いや、起きてる」
「あは、だろうね。ゾロって寝る時もっと豪快だもん」
「じゃあなんで聞くんだ」
「一応」

彼女はそうやって笑いながら、いつもの様に自分の左側に座る。今は差していないが、大抵自分の右側には自分の愛刀である三本の刀が差してあったり置いていたりするので自然と左側に座ると言う癖がついてしまったと、いつか彼女は言っていた。きっと今もそうなのだろう。自分達は特に会話で盛り上がると言う事もなく、でも全く静かになるというわけでもなく、たまに訪れる静寂も楽しみながらポツポツと二人の言葉のやり取りを楽しんだ。

そしてどれぐらい時が立った時だろうか?
日ははじめより結構傾いていたし、珍しく天候が急に変わる事も無かったから、そこそこ長く話してした気がする。何度目ともなる静寂が訪れた時。突如、シイナの頭が自分の肩に静かに倒れこんできた。

「おいシイナ…」
「…」

返ってくるのは勿論、シイナの静か過ぎる寝息。自分の肩からシイナの微かな筋肉の緊張が伝わってきた。少し顔を動かしてシイナの顔を覗き込めば、シイナが寝たふりを決め込んでいるのがすぐに分かる。
だけれどゾロは、それを指摘しようとは、けして思わなかった。

「…………(珍しい、な)」

彼女がこんな風に甘えて来るなんて。

普段、シイナの性格から言って彼女がこんな風に自分から頼って来ることはない。恥ずかしいのかなんなのか、自分からスキンシップもなかなか取らないような奴で、大抵そう言う事は自分からするようにしている。それを不満に思ったことはないし、それが自分達の在り方だと思っていたので気にした事も無かったのだ。多分、自分が今彼女が起きている事を指摘すれば、シイナは顔を真っ赤にしてどついて来るのだろう。
そんな姿も愛らしく可愛く感じたりするのだろうが…………

「たまにゃこんなのも、良いもんだな」
「…………」

シイナはその言葉に少し肩をピクッと 揺らす。その動作があまりにもあからさま過ぎて、思わずゾロも喉の奥を揺らして笑ってしまった。本当に分かりやすい奴だ。
ゾロは一通り笑いを堪えた後、シイナの背から腰に腕を回し、そして肩に手を置いて、ちょっとだけ空いていた自分達の隙間を埋めた。あくまでも起こさないように、そつと。自分の方にシイナが寄ったのを確認するとゾロは、シイナの静かな呼吸音を子守唄にするかのようにそっと、目を閉じた。
閉じる前に真っ赤になったシイナの耳を見て、また湧きおこってきた笑いを堪えつつ、これはゆっくりと眠れそうだ、なんて心の隅でポツリと思った。











*****

この男が誰か、一瞬分からなくなりました。
…だけど、あとで豪快にいびきでもかいて彼女を起こして怒られるんですよね、きっと(笑)

ちょっと文章短すぎたかな?







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