拝啓思い人様


君はこの手紙を読んでくれているだろうか。

簡潔に書く。君が好きだ。

気がついたのはいつだっただろうか。

最初はただの幼なじみだった。
小学生の頃は沢山遊んだけど、学年があがるにつれ、遊ばなくなった。
周りから冷やかされたからかもしれない。

うるせぇ!そんなんじゃない!

あの頃僕はそう言った。
子供だったんだ。

中学に入学してからも同じ。
たまたま三年間同じクラスだった。
小学生からの付き合いがある奴らには、運命だ、宿命だ!とかいわれたね。

たまに話すことはあったけど、それも少しだけ。それで一年生が終わってしまった。
そのせいか騒いでた奴らもおとなしくなっていった。
君が、騒ぐ奴に蹴りをいれたのもあるかもしれない。

そのまま中学も卒業間近という時になって驚いたよ。
君の進学先が僕と一緒だったからね。

高校で君は美術部、僕は帰宅部。
僕は君と違い充実したとは言えない放課後をすごしていたよ。

君の描く絵は綺麗だ。
いや、こんな陳腐な言葉では語り尽くせない。
それ程までに純粋で美しい。
高校三年間で君は大きな賞を沢山とった。
だんだん君が遠くなる気がした。

高校を卒業後、君は外国に行くと知った。
絵の才能を認められ、周囲の薦めもあっての事だと聞いた。

昔から絵を描くのが君はとても好きだったからね。
本来は喜ぶべきだった。

どうしてあんなことを言ったんだろう。言えたんだろう。
今はただただ後悔している。

どうして僕に言わなかったんだ!
卑怯者!

君と話さず、逃げていたのは…卑怯なのは僕なのに。君を遠ざけたのは僕なのに。
その時初めて心から泣く君を見た。
小学生の時、からかわれても泣かなかった君が。
中学生の時、からかってきた奴に蹴りをいれた、気の強い君が、初めて僕の前で泣いた。
そして、そのまま走っていってしまった。

人一倍不安だったのは君なのに。
思いを伝えない卑怯者の僕のくせに君を泣かせてしまった。

謝ろう。でも君を校内で見る度に臆病な自分が邪魔をする。
また今度、また今度。
そう思ってとうとうこの日を迎えてしまった。

卒業式に言おう。
弱虫な僕はそう思った。
どうにでもなるさ。そう思った。
……君が卒業式の日に飛行機に乗って行ってしまうと知るまでは。

必死に先生達にお願いして、飛行機の時間を教えてもらった。
あんなに真剣に頭を下げたのは初めてだ。
でもそのおかげで君に手紙を渡せる。
卒業式をサボった事について、君は何も気にしなくていい。
僕の問題なのだから。

長々と書いてしまったが最後に、あの日あんな事言ってごめん。そして……僕は、君を愛しています。
どこに行っても頑張って下さい。
僕はずっと君の描く絵のファンであり、味方であり続けることをここに誓います。

敬具

追伸
中学の頃、僕を追いかけて僕と同じ進路にしてくれた。そう思うのは傲慢だろうか?
もしもそうなら…こんどは僕が君を追いかけてもいいかい?




雲の上を飛ぶ飛行機の中、ずっと片思いをしていた、幼なじみの彼からの手紙を読んだ彼女は、その手紙をそっと抱きしめ、静かに涙を流した。





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