第一話 迷子のマーメイド



誰かが呼んでいる。


「………さ…」


風が髪をさらいながら凪いでいく。


「…き……い」


磯の香りがする。
遠くでカモメが鳴く声が聞こえた。


「起きなさい!」
「ぎゃっ」


どすん、と。
今まで寝っ転がっていた白いベンチから落ちる。落ちた衝撃と堅いベンチに寝ていたせいか体が地味に痛い。


「ほら、もうすぐ着くわよ」


え、どこに?

寝起きの頭はまだ濃く靄がかかったように正常に動かない。いったい私は何処に向かっていたのだろうか。部屋の荷物をまとめた母に声をかけられ言われるがままに着いていく。

廊下が少し揺れた。
私はまだ寝ぼけているようだ。とりあえずぶっ倒れるという無様な姿は晒したくはないので一歩一歩慎重に置いて行かれないように歩いた。










…はて?

ここはどこですか、マイマザー。


見渡す限りの碧い海と真っ蒼な空。そして崖と崖の間にある小さな街。(大都市ではない)

……のんびりと空を泳ぐ白い雲が恨めしいぞ、コンチクショー。





3Pカラー
赤色黄色と、私色?





(ごめん、これドッキリ?)

まったくもって働かない頭に浮かんだのは悪戯好きな父の顔。
そして海の上を飛んでいるカモメにはあえて触れないでおこうと思った。いや、だって見間違いじゃなければ…さ、あれはキャ……止めておこう。きっとまだ私の脳は活動していない。たぶん、きっと。(うん、絶対そうだ)








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